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技能実習生をクビにすることはできる?手順や注意点をチェック!

最近では外国人技能実習生を受け入れる企業が増えてきています。とはいえ、雇用した技能実習生が、必ずしも優秀とは限りません。勤務態度が悪かったり、職場の風紀を乱したりするような人であれば「クビにできないだろうか」と考えることもあるでしょう。

また、企業側の業績悪化などの要因で、解雇せざるを得ない状況に陥ることもあります。さまざまなケースが想定されますが、技能実習生をクビにすることはできるのでしょうか。当記事では、雇用した外国人技能実習生を解雇する方法や注意点を詳しく解説していきます。

技能実習生をクビにすることは可能?

技能実習生をクビにすることは可能

技能実習生をクビにすることは可能です。ただし、そう簡単にはクビにできません。なぜ簡単にクビにはできないのか、その理由を詳しくみていきましょう。

日本人と基準は同じ

まず大前提として、外国人技能実習生も日本人と同じ「労働基準法」が適用されます。そのため、外国人技能実習生でも日本人でも解雇する条件は同じになるということです。

技能実習生を含め、企業に勤めるすべての従業員は労働基準法で保護されています。経営者の気分やちょっとした都合で、従業員を解雇することはできないのです。

さまざまな理由があって解雇した場合でも、解雇された従業員が不服であれば異議申し立てを行うことができます。このように、不当解雇を問題とした裁判は過去にも大きく問題になってきました。

合理的な理由がある場合は可能

大きな問題もないのに解雇することはできませんが、もちろん合理的な理由がある場合は解雇することが可能です。また、その理由が社会通念上相当であると認められる必要があります。

つまり、第三者が見ても「解雇せざるを得ない」とされる理由が必要になるということです。たとえば、企業側が最大限の努力をしているにもかかわらず、業績が悪化しており従業員を減らさなくてはならないというような理由です。

また、横領や不正行為といった悪質な行動も解雇の理由になります。勤務態度の悪さなどは、個人の捉え方もあるので裁判になった時に不利になることもあるでしょう。

事前に就業規則に記載しておくことがポイント

これから外国人技能実習生を受け入れる企業の場合は、就業規則に退職に関する事項を記載しておくことがポイントです。たとえば、技能実習生が失踪してしまい、何日も音信不通になるケースもあるでしょう。

その場合でも就業規則に記載がないと、いつまでも退職の手続きを取ることができません。しかし就業規則に「行方不明による欠勤が30日に及んだ時は退職とする」などと記載しておけば、本人と連絡がとれなくても退職手続きを行うことができます。

ただし、民法第627条には「解約の申し入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定められていることから、14日以上の行方不明期間にしておくようにしましょう。

どうしても技能実習生を解雇したい場合の方法

技能実習生を解雇したい場合の方法

適正な方法で技能実習生を解雇すれば、問題にはなりません。ここからは、どうしても技能実習生を解雇したい場合の方法を解説していきます。

監理団体に相談する

まずは技能実習生の受け入れの際に利用した監理団体に相談しましょう。監理団体は受け入れ企業と外国人技能実習生の橋渡し的な存在です。技能実習生の相談も受けていますので、何か悩みや困ったことを監理団体に相談している可能性もあります。

何か聞いていることがないか、困ったことがないかどうかを監理団体に確認してみましょう。もし取り合ってくれない場合は、技能実習機構に相談してみてください。監理団体は事情によって変更することもできますので、万が一の時には変更してみることもおすすめです。

非行・違法行為は証拠が必要

技能実習生の非行や違法行為が原因でクビにしたい場合は、動画や写真、書面などで記録を残しておきましょう。たとえば、技能実習生が遅刻や欠勤を繰り返していることが理由であれば、出勤簿やそれによって業務に支障をきたしている証拠などを集めておく必要があります。

実習生に渡した指示書や書類、提出された書面や試験結果なども証拠として有効です。技能実習生の行為が他の人に迷惑をかけたのであれば、その内容を示す書面やメールといった資料も残しておきましょう。

また、企業側が指導したにもかかわらず、改善されないことを証明する必要もあります。指導内容や回数、指導後の様子などを証明できる記録も用意しておくようにしてください。

新たに受け入れてくれる企業を探す

企業側の事情により、やむを得ず解雇しなければならない場合は「新たに受け入れてくれる企業を探す」必要があります。技能実習生の場合、習得する技能が限定されているため日本人のように簡単に次の就職先を見つけることができません。

技能実習生が従事する業務内容を変更することはできないので、同じ職種で次に受け入れてくれる企業を探しておきましょう。とはいえ、次の職場が見つかったらすぐに解雇できる、という簡単な話ではありません。経営再建を図るための計画書を作成したり、お金を借用したりといった企業努力が必要です。

30日前までに解雇予告をする

労働基準法第20条によると、解雇するためには原則として30日以上前に解雇予告をするか30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。そのため、いかなる理由があるにせよ、解雇する前には本人に30日前に解雇予告をするようにしましょう。

ただし、30日前までに解雇予告をすればすべての解雇が正当化されるというわけではありません。たとえ30日前に予告したとしても、合理的な理由がない場合や社会的通念上相当でないと判断されれば「不当解雇」とみなされるので注意が必要です。

弁護士に相談する

最後の方法は「弁護士に相談する」という方法が挙げられます。外国人技能実習生に限らず、従業員を解雇するというのは非常にデリケートな問題です。少しでも手順を間違ってしまうと不当解雇となり、会社が訴えられることもあるでしょう。

弁護士に間に入ってもらうことで、「言った、言わない」のトラブルを避けることにつながります。また、話し合いがこじれて人事担当が対応しきれない場合にも、弁護士に任せることができるでしょう。

損害賠償を請求されれば、会社への損害も大きくなります。会社の規模が小さければ小さいほど、ダメージは大きくなるでしょう。万全を期す場合にはぜひ弁護士に相談することをおすすめします。

技能実習生をクビにした場合の企業のペナルティ

技能実習生をクビにした場合の企業のペナルティ

正当な手順を踏んだ解雇であれば、たとえ技能実習生をクビにしたとしても企業側には何のペナルティもありません。ただし、事業主の一方的な理由や次の受け入れ先を見つけないまま解雇する場合、さらに解雇予告や解雇予告手当を支払うといった法令を無視した解雇の場合は「不当解雇」となり、ペナルティの対象となります。

技能実習生受け入れ企業の認定は取り消しとなり、その後5年間は外国人技能実習生を受け入れることはできません。さらに行政から指導が入ることにもなるでしょう。企業のイメージ悪化にもつながりますので、不当解雇は避けるようにしてください。

技能実習生の解雇に必要な手続き

技能実習生の解雇に必要な手続き

実際に技能実習生を解雇する場合は、日本人従業員と同じく退職の手続きが必要になります。ここからは、外国人技能実習生の解雇に伴う手続きを解説していきます。

解雇理由証明書を発行する

まずは「解雇理由証明書」の発行です。解雇理由証明書とは企業側が解雇した従業員に対して発行する、解雇の理由を記載した書面のことです。解雇理由証明書の発行は、請求された場合には遅滞なく交付するよう労働基準法第22条で義務付けられています。

もし請求されたにもかかわらず、事業主が発行しない場合には事業主に30万円以下の罰金が課されるので注意しましょう。解雇理由証明書には退職の理由だけでなく、在籍期間や担当していた業務内容、在職中の役職、賃金などを証明しなければなりません。

年金保険被保険者資格、雇用保険被保険者資格喪失届の提出

次は健康保険・厚生年金保険被保険者資格および雇用保険被保険者資格の喪失届の提出です。健康保険や年金保険は届出の他に、外国人労働者が持っていた健康保険被保険者証を添付して提出します。もし失踪等で健康保険被保険者証が受け取れない場合には、代わりに「健康保険被保険者証回収不能届」を提出しましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届はハローワークに提出します。雇用保険被保険者資格喪失届だけでなく離職証明書もあわせて提出してください。

外国人雇用状況届出書の提出

「外国人雇用状況届書」は、技能実習生が雇用保険に加入していない場合に提出する書類です。外国人雇用状況届出は、外国人労働者を雇用するすべての企業に対して提出が義務付けられており、もし漏れがあると30万円以下の罰金が課されるので注意しましょう。

外国人雇用状況届出書の提出が免除されるのは「外交公用」の資格者または日本国籍を取得した外国人のみです。それ以外の外国人労働者は技能実習生を含めて、在留カード番号を記載した外国人雇用状況届出書を提出しなければなりません。退職した日の翌月末日までに提出しましょう。

技能実習生の解雇にまつわるトラブル事例

技能実習生の解雇にまつわるトラブル事例

外国人技能実習生の解雇に関しては、過去にもトラブルが発生しています。トラブル事例を確認しながら、同じようなトラブルが起きないように努めましょう。ここからは、技能実習生の解雇にまつわるトラブル事例を解説していきます。

不当解雇であると訴えられる

まずは「不当解雇であると訴えられる」ケースです。不当解雇とは労働基準法や就業規則の規定を無視して、事業主の一方的な都合で従業員を解雇することです。性別を理由にした解雇や、解雇予告・解雇予告手当なしの解雇は不当解雇とみなされます。

また、国籍や信条、社会的身分を理由とした解雇も不当解雇となるため、外国人技能実習生を解雇する際は注意が必要です。技能実習生の場合、遅刻や欠勤、協調性に欠けた行動がみられるケースもあります。

とはいえ、それを「外国人だから」という理由で解雇してしまうと不当解雇にあたります。技能実習生側から不当解雇として訴えられると、企業側に賠償損害請求が発生するので注意しましょう。

解雇予告をせずに解雇してしまった

先述したように、解雇予告は30日前に行わなければなりません。これは労働者を守るために労働基準法で決められており、急な解雇で収入が途絶え生活が困窮するのを防ぐための規則です。

企業の業績悪化などにより、30日の解雇予告の猶予がない場合には30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。もし解雇予告も解雇予告手当も支払わない場合は法律違反となり、6ヵ月以下の懲役または30万円以上の罰金が科せられるので注意が必要です。

賃金未払いに関するトラブル

最後は「賃金未払いに関するトラブル」です。業務態度が悪い、無断欠勤が多いなど素行に問題のある技能実習生の場合、賃金の支払いをしたくないと感じるケースもあるでしょう。とはいえ、出勤した分の賃金は規定に基づいて支払わなければなりません。

たとえ、技能実習生が失踪して退職扱いになったとしても、出勤していた分の賃金は支払う義務があるのです。外国人技能実習生に関しては、退職に関わらず賃金の未払いが問題になっています。適正な賃金の支払いが行われなかった場合は、労働基準法の違反となりますので注意が必要です。

まとめ

技能実習生の解雇について

技能実習生をクビにすることは可能ですが、日本人従業員の解雇と同じく最終手段となります。事業主の一方的な都合や労働基準法の手順に則っていない解雇は「不当解雇」となり、罰則の対象となるため注意が必要です。

とはいえ、合理的な理由や社会通念上相当な理由があるとみなされれば、解雇することも可能です。あまりにも勤務態度が悪い場合は、指導記録などの証拠を残しておくようにしましょう。

企業の業績悪化が理由の解雇であれば、新たな受け入れ先を探しておく必要があります。また、30日前までに解雇予告をするか30日分以上の解雇予告手当の支給が必須となるため、注意しましょう。トラブルに発展する事案もあるため、どうしても外国人技能実習生を解雇したい場合には弁護士に相談するのもおすすめです。