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フィリピン人の技能実習生を受け入れる際のポイント

現在、日本への技能実習生の最大の供給国はベトナムですが、かつての中国のように、自国の産業と経済が成長すれば、比較的早い時期に労働力の輸入国に転じる可能性も否定できません。現在、国内失業率が高い中で豊富な労働力人口を擁するフィリピンは、国策として海外就労を推進しています。折しも、日本が法整備を進め、「介護人材」の獲得を積極化する中、フィリピンに熱い視線が注がれています。今回の記事ではフィリピン人技能実習生の受け入れに関するポイントを整理しましたので、ご参考ください。

フィリピン人技能実習生の受け入れ現状

フィリピンは、日本に限らず世界中に就労者を送り出しています。その背景には、「若年層の高い人口比率と失業率」、「英語能力の高さ」、「政府の充実したサポート体制」という3つの特徴があります。このような特徴が、日本におけるフィリピン人技能実習生の受け入れにどのように影響しているのかを踏まえ、受け入れの現状について確認しておきましょう。

世界最大の労働力輸出国フィリピン

フィリピンは、世界最大の「労働力輸出国」といわれており、国民の10人に1人にあたる1,000万人が海外に居住しています。この在外フィリピン人の本国への送金額は、2018年には過去最高の289億4,300万ドルに達し、2019年1月~7月の累計も前年同期比3.9%増の172億1,900万ドルを記録しています(フィリピン中央銀行資料より)。

2018年の金額は、フィリピンの国内総生産の約1割に相当し、この外貨がフィリピン国内の消費市場を活性化させて、2012年以降7年連続で続く6%以上の経済成長に貢献しているのです(日本貿易振興機構の分析レポートより)。

前述した若年層の人口比率については、フィリピンの人口1億98万人のうち19歳未満の人口比率は44%となっており、インドの41%、ベトナム35%、インドネシア36%、中国24%などと比べても若年層の比率の高さがわかります。

そして、2019年7月時点における全体の失業率は5.4%、不完全雇用率(注1)は13.9%で、7月の失業率、不完全雇用率ともに2005年以降で最も低い数値となっています。その一方で、15歳から24歳の若年層の失業率は14.4%と高水準にあり、国内の全失業者数243万2,000人に占める若年層の失業者数は110万6,000人(全体の45.5%)という深刻な状況となっています(フィリピン統計庁)。

フィリピン統計庁が示す年齢別の失業者数は、次の通りですが、最終学歴別の失業者数は、大学卒が最も多い38.2%であり、学歴の高低と失業率には相関関係がないことがわかります。この対策として、フィリピン政府は「初回求職者支援法(2019年4月施行)」を制定し、大学新卒者や中学および高校卒業者で一度も就職したことがない求職者を対象に、就職活動において必要となる資料や手続き費用等を免除しています。

(表1)フィリピンの年齢別失業者数

年齢 2019年7月時点 2018年7月時点
失業者数 割合 失業者数 割合
15歳~24歳 1,106 45.5 1,040 44.7
25歳~34歳 807 33.2 719 30.9
35歳~44歳 248 10.2 275 11.8
45歳~54歳 158 6.5 178 7.6
55歳~64歳 91 3.7 99 4.2
65歳以上 23 0.9 18 0.8

(単位:千人・%)
(出典:フィリピン統計庁、ジェトロ資料を引用)

(表2)最終学歴別の失業者数

学歴別 2019年7月時点
失業者数 割合
小学校卒 292 12.0
中学校卒 881 36.2
高校卒 127 5.2
専門学校卒 195 8.0
大学卒 929 38.2
学歴なし 8 0.3
合計 2,432 100.0

(単位:千人・%)
(出典:フィリピン統計庁、ジェトロ資料を引用)

(注1)不完全雇用率

不完全就業や過少雇用とも言われ、完全雇用にまで達していない雇用水準を指しています。具体的には、一般的な労働時間や日数などに達しない条件で雇用される状態で、潜在失業者の存否などを測定する基準となっています。

また、在外フィリピン人労働者の年齢、性別の内訳を見ると、45歳未満が全体の82.5%を占め、この中でも25歳から34歳までの若年層が多くなっており、女性の多さも目立ちます。


(表3)在外フィリピン人労働者の年齢・性別の内訳

年齢 合計 男性 女性
人数 割合 人数 割合 人数 割合
15歳~24歳 122 5.3 54 5.3 69 5.4
25歳~29歳 460 20.0 172 16.9 288 22.4
30歳~34歳 545 23.7 224 22.0 322 25.1
35歳~39歳 441 19.2 196 19.3 247 19.2
40歳~44歳 329 14.3 155 15.3 172 13.4
45歳以上 402 17.5 215 21.2 186 14.5
合計 2,299 100.0 1,016 100.0 1,284 100.0

これらの資料から、フィリピン国内の若年層の失業率が高いことがわかり、若いフィリピン人が海外での就労を選ばざるを得ない事情も読み取ることができます。

フィリピン技能実習生の受け入れ現状

まず、フィリピンを含めた主な出身国別の技能実習生の受け入れ人数について、過去5年間の推移を確認すると次のとおりとなっています。


(表4)在留資格「技能実習」の主な国籍別在留者数

国別 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
ベトナム 34,039 57,581 88,211 123,563 164,499
中国 100,108 89,086 80,858 77,567 77,806
フィリピン 12,721 17,740 22,674 27,809 30,321
インドネシア 12,222 15,307 18,525 21,894 26,914
タイ 2,312 6,084 7,279 8,430 9,639

このように、フィリピン人技能実習生の受け入れ人数は、ベトナムや中国に比べると決して多いとは言えませんが、毎年20%程度の伸び率で着実に増加していることがわかります。しかし、ベトナムのように爆発的に増加しない原因はどこにあるのでしょうか。

これには、フィリピンの教育制度が大きく関わっていると考えられます。かつて50年間にわたって米国の統治下にあったフィリピンは、英語を公用語としており、小学校1年生から英語の授業が始まり、その他の授業も低学年から全て英語で行われています。小学校を卒業するまでに英語力を身につけることで、将来は英語圏の国での就労に備えさせるとともに、国内における外資系企業など比較的賃金水準の高い職種に就かせることも念頭においた国策と言えます。

この成果として、世界各国の英語能力指数(2018年)を調べた資料では、14位(日本は49位)にランクされ、英語力の高い国として位置づけられています。また、このフィリピン人の英語力の高さは、フィリピンに進出した日系企業においても、投資環境という点で大きな魅力の一つとされています。

このように英語力が高いフィリピン人は、自ずと英語圏への就労が多くなるため、相対的に日本を就労先として選ぶことが少ないとされています。このほか、日本で就労するフィリピン人にとって、日本語の習得が大きな壁になっているとも言われており、この点もまた、これまで日本への就労が劇的に伸びてこなかった理由としてあげられます。

フィリピン人技能実習生の特徴

フィリピン人の特徴や性格を語る上で無視できないのは、国民の8割以上がカトリック教徒であるという宗教的な側面です。教義によって、中絶や人工的な抑制法を禁じられていることから、フィリピン社会においては、子供は神から授けられた祝福と考えられ、家族にとっての精神的な支柱となっています。いわゆる、家族・親族第一主義と言われる所以です。以下、このことをベースにフィリピン人の特徴を紹介します。

一般的な評価

フィリピンに留学または仕事で一定期間過ごした経験のある方のコメントからは、次のような特徴が浮かび上がります。

人前でフィリピン人を叱るのはNGだということ。フィリピン人は、常に自己を取り巻く社会や集団における規範から外れることのないよう、強い道徳概念を教え込まれています。日本語で言うところの「恥知らず」や「恩義」といった言葉が日常にあり、好ましい人間関係を維持するために、社会や集団、人から一度恩を受けると、相手へ自発的にその恩義のお返しをしなければならないという社会規範の中で育っているのです。

このため、非常にプライドが高く、大勢の中で自分だけが叱られると言う事態は、フィリピン人にとって恥をかかされたことになり、到底受け入れ難い屈辱でしかなく、好ましい人間関係を築く障害となります。したがって、職場(技能実習の現場)において、何か注意を与える、または厳しい言葉を使うことが必要なときは、個室で、一対一で諭すという配慮が求められます。

フィリピン人は家族・親族ファーストであり、特に男性は、家族を理由とした遅刻や欠勤が多いと言われます。これは仕事を休むための口実にすることが多いようで、「恥」や「恩義」を知る割には、時間にルーズで、自分ファーストな性格が透けて見えます。一方で、女性はしっかり者が多いと言われており、安定志向が強いため真面目な働き者が多いようです。

国の歴史的な見地からの評価

現代のフィリピンにおいては、社会を構成する階層の上下および国内外を問わず、「働く妻・働く母親」の姿が増えています。全就業者に占める女性の割合は38.9%(日本43.5%)で、管理職に占める女性の割合は48.9%(日本12.9%)となっています(2018年版データブック国際労働比較:(独)労働政策研究・研修機構より)。

フィリピン人女性の就業割合は今後も増加する傾向にあり、労働力人口の増加とともに、国内の産業基盤の弱さから海外への就労が増加すると予想されます。また、フィリピンは、教育面においても、19世紀末からのアメリカ統治下において、学校教育の普及方針から女子の高等教育の振興に注力してきた歴史があり、高学歴女性の社会進出基盤が構築されてきたことが、前出の管理職比率の高さにつながっていると言えます。

2000年代以降の海外就業は、女性の高学歴化を主因として、看護師や介護福祉士の割合が増加傾向にあります。これまでの看護師の行き先は、サウジアラビアをはじめとした中東諸国と米国、英国等ですが、介護士の就業先は、台湾が最も多く、次いでイスラエルやカナダとなっています。日本は、この分野の人材難が深刻化していることから、外国人技能実習生制度を含め、受け入れ国としての取り組みを積極化し、フィリピン人材の受け入れを強化したいところです。

フィリピン人技能実習生を受け入れる際のポイント

中国のように、自国の産業が成長して国内雇用が増加すれば、自ずと海外就労は減少に転じます。現在、技能実習生として最も多くの人材を送り出しているベトナムについても、国内の産業事情によっては、早晩、中国と同様の軌跡を辿る可能性があります。ここからは、将来、ベトナム・中国に代わる存在となる可能性が高いフィリピン人技能実習生受け入れのポイントを解説します。

新しい在留資格「特定技能」との関係

2019年4月1日に施行された改正入管難民法において、新たな在留資格として「特定技能」が導入されました。特定技能1号の資格取得には、日本語と技能の試験に合格する必要がありますが、3年以上の経験を持つ技能実習生は無試験で移行できます。

これに加え、2017年11月1日施行の「技能実習法」によって制度の改善へ向けた取り組みが進んでいることを考えれば、技能実習生の受け入れ環境の整備自体は進んだと言えます。また、技能実習法施行を機に、技能実習の対象職種に「介護」が加わり、改正入管難民法における在留資格である「介護」とあわせ、国は、介護業界への人材誘導を積極化する姿勢を鮮明にしています。

日本の介護業界は、これまで介護職員の獲得に奔走してきたものの、十分な数の人材を確保できていません。現在、日本の介護業界には、「EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用」、「日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」をもつ外国人の雇用」、「技能実習制度を活用した外国人技能実習生の雇用」、「在留資格「特定技能1号」をもつ外国人の雇用」という4つの選択肢があります。

日本の制度改正を受けて、フィリピンは敏感に反応し、介護士を養成する専門学校の生徒にとどまらず、現役の看護師までが日本での就労を希望していると言います。この現象は、2019年にNHKが「フィリピンから介護人材確保を目指せ」とのタイトルで特集番組を放送し、日本語能力と言う厚い壁の問題をはじめとした人材獲得の困難さとともに紹介されています。

具体的な内容についてはこの記事の本旨から外れるため省略しますが、それなりの根拠をもって日本はフィリピンに期待を寄せ、フィリピンの介護職や看護師もまた日本に大きな希望を見出しているのです。前述のとおり、外国人介護職員の雇用については、4つの制度から選択できますが、ここでは、「技能実習制度」と「特定技能1号」との制度の違いや共通項を確認しておくことにします。


(表5)介護職にかかる技能実習制度と特定技能1号の比較表

項目 技能実習制度 特定技能1号
目的

日本から相手国への技能移転(国際貢献)

人手不足対応のための一定の専門性・技能を有する外国人の受け入れ

送出し国 国の制限なし 国の制限なし
在留期間

1年目 : 技能実習1号(最長1年)
2~3年目:技能実習2号(最長2年)
4~5年目:技能実習3号(最長2年)

合計で最長5年(優良な監理団体および実習実施者の場合)

※2号は技能実習評価試験の合格後1号から移行します。3号は技能実習評価試験の合格後2号から移行します)。

「特定技能1号」

最長5年

家族の帯同 不可 不可
求められる日本語能力

《入国時》
日本語能力試験N3程度が望ましい水準で、N4程度が要件となります。
《入国1年後(2号に移行時》
N3程度が要件で、1年後にN3に満たない場合は、雇用されている事業所で介護の技能習熟のために必要な日本語を学ぶことを条件に、引き続き3年目まで在留が可能です。

入国前の試験等で以下の日本語能力水準を確認します。
・ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力。
・介護の現場で働く上で必要な日本語能力。
※技能実習3年を終了した者または介護福祉士養成施設を修了した者は、必要な日本語能力水準を満たしているものとし、試験等が免除されます。

介護等の知識・経験等

《団体監理型の場合》
外国において「同等業務従事経験」があること、または技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること。
《企業単独型の場合》
受け入れる事業所と密接な関係のある外国の機関の事業所の職員であること。

入国前の試験等で以下の技能水準を確認します。
・受け入れ業種で適切に働くために必要な水準
※技能実習3年を修了した者または介護福祉士養成施設を修了した者は、必要な技能水準を満たしているものとし、試験等が免除されます。

介護福祉士国家試験の受験義務

原則として受験義務なし(任意)
※ただし、介護福祉士国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更することが可能です。

原則として受験義務なし(任意)
※ただし、介護福祉士国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更することが可能です。

受け入れ調整機関等

団体監理型:各監理団体

企業単独型:各企業

登録支援機関によるサポート
勤務できるサービスの種類 訪問系サービス以外 訪問系サービス以外
配属基準に含められるまでの期間

日本語能力試験N2以上の場合は、雇用してすぐに配置基準に含められます。その他の場合は、雇用して6カ月経過すれば含められます。

雇用してすぐに配置基準に含められます(ただし、6か月間受け入れ施設におけるケアの安全性を確保するための体制が必要です)。

夜勤の可否

条件付きで可能

(条件:技能実習生以外の介護職員を同時に配置することが求められるほか、業界ガイドラインにおいても技能実習生以外の職員と技能実習生の複数名で業務を行う旨規定されています。また、夜勤業務等を行うのは、2年目以降に限定する等の努力義務を業界ガイドラインに規定しています)

可能
同一法人内の異動の可否

可能(ただし、技能実習計画上、技能等を修得するのに、その異動が必要と認められる場合に限られます)

可能
介護職種での転職の可否 原則として、不可 可能

フィリピン人の技能実習生は、現状では、男性は主に建設関係に従事することが多く、女性は工場でのパッケージ作業、食品加工、パン販売店などで就労することが多いのが実態です。これらに加えて、この介護の分野への誘導が進めば、フィリピン人技能実習生が増加する可能性が高まります

受け入れ拡大の為の課題(日本語習得の壁)

ジェトロがフィリピンの人材送出しビジネスを行う機関に確認したところ、日本で働くフィリピン人が直面する問題として「日本語が難しいこと」と「文化と倫理の相違」を挙げています。特に日本語については、方言や俗語を使われると、ある程度日本語の学習を積んだフィリピン人にとっても難解であるとの声が上がっています。

フィリピンでは、日本での就労を希望するフィリピン人向けに日本語学校の紹介や、国の機関が日本語コースを提供するなど、日本語の習得へ向けた取り組みを進めているものの、これらの教育機関では教えない日本語が実際の日常会話で使用されることが多く、日本語習得の壁となっていることがうかがえます。

フィリピン人技能実習生の受け入れにあたり、最も重視しなければならないのがこの言葉の問題であることがわかりますが、前出の人材送出し機関によれば、他国と比較して、日本ではフィリピン人労働者への虐待や事件が少なく、給与面の待遇も悪くないことから、今後日本を就労先として選択するフィリピン人が増加する傾向にあると述べています。

送出し機関のみに頼るのではなく、実習実施機関としても、実習生受け入れ後の日本語習得へ向けた積極的な取り組みが求められるところです。

フィリピン人技能実習生を受け入れる際の注意点

ここからは、実際に技能実習生を受け入れるにあたって、遵守しなければならない法定事項やその他注意すべき事項について解説します。

技能実習計画の作成と進捗管理

技能実習実施者である受け入れ企業は、技能実習計画を作成し、「外国人技能実習機構」によりその計画が適当であるとの認定を受ける必要があります。技能実習計画は、第1号、第2号、第3号の技能実習生ごとに、各区分に応じて認定を受ける必要があります。

なお、技能実習の最終段階である第3号技能実習にかかる計画は、実習実施者が、「技能等の修得等をさせる能力につき高い水準を満たすものとして主務省令で定める基準に適合していること」という要件があり、実習実施者は高水準の体制を整備しておかなければならない点に注意が必要です。

また、実習実施者は認定された技能実習計画どおりに実習を実施する必要があります。認定実習計画と異なる実習が行われた場合、改善命令の対象となり、場合によっては認定取消という厳しい処分が課される可能性がありますので、実習実施にあたっては、進捗管理を厳しく行うことも重要なポイントです。なお、技能実習計画の認定基準とされる主要な項目と概要は次の通りです。


(表6)技能実習計画の主要な認定基準

  • 1)修得技能等の要件(技能実習生の本国において修得等が困難な技能等であること)
  • 2)技能実習の目標の要件
  • 《第1号の目標》
  • ・技能検定基礎級またはこれに相当する技能実習評価試験の実技試験および学科試験への合格など。
  • 《第2号の目標》
  • ・技能検定3級またはこれに相当する技能実習評価試験の実技試験への合格。
  • 《第3号の目標》
  • ・技能検定2級またはこれに相当する技能実習評価試験の実技試験への合格。
  • 3)技能実習の内容の要件
  • ・同一の作業の反復のみによって習得できるものではないこと。
  • ・第2号および第3号については、移行対象職種・作業(主務省令別表記載の職種および作業)にかかるものであること。
  • ・技能実習を行う事業所で通常行う業務であること。
  • ・移行対象職種および作業については、業務に従事させる時間全体の2分の1以上を必須業務とし、関連業務は時間全体の2分の1以下、周辺業務は時間全体の3分の1以下とすること。また、必須業務、関連業務、周辺業務のそれぞれについて、従事させる時間のうち10分の1以上を安全衛生にかかる業務を行うこと。
  • 4)技能実習生の要件
  • ・年齢・制度趣旨理解
  • ・業務経験
  • ・送出国の公的機関からの推薦
  • ・修得技能等の現地活用(帰国後、修得等した技能等を要する業務に従事する予定があること)
  • ・一旦帰国(第3号の技能実習生の場合は、第2号終了後に1か月以上帰国していること)
  • ・再度の技能実習の原則禁止
  • 5)技能実習の要件
  • ・保証金や違約金契約の禁止
  • ・人権侵害行為が行われていないことの定期確認
  • 6)入国後講習の要件
  • ・第1号の技能実習生に対する入国後講習、入国後講習に専念するための措置
  • 7)複数の職種および作業の要件
  • ・複数職種の場合は、2号移行対象職種、相互関連性、実施の合理性があること
  • 8)実習実施機関の要件
  • ・第1号は1年以内、第2号および第3号はそれぞれ2年以内であること
  • 9)目標達成の要件
  • ・前段階における技能実習の際に定めた目標が達成されていること
  • 10)技能等の適正な評価の実施
  • ・技能検定、技能実習評価試験等による評価を行うこと
  • 11)適切な体制、事業所の設備、責任者の選任の要件・・・(表5)参照
  • 12)実習監理の要件
  • 13)日本人との同等報酬等、技能実習生に対する適切な待遇の確保・・・(表5)参照
  • 14)労災保険措置の要件
  • 15)帰国旅費負担の要件・・・(表5)参照
  • 16)優良な実習実施者の要件(第3号技能実習の場合)
  • 17)技能実習生の受け入れ人数枠の要件・・・(表5-1~5-4)参照

技能実習生の法定受け入れ人数の確認

実習実施者が受け入れることができる技能実習生の人数は、当該企業の規模等に応じて、「基本人数枠」、「団体監理型の人数枠」、「企業単独型の人数枠」の枠組みで上限数が定められており、各人数枠は以下の通りとなっています。


(表7-1)基本人数枠

実習実施者の常勤の職員の総数 技能実習生の人数
301人以上 常勤職員総数の20分の1
201人~300人 15人
101人~200人 10人
51人~100人 6人
41人~50人 5人
31人~40人 4人
30人以下 3人


(表7-2)団体監理型

通常の者 優良基準適合者
第1号(1年間) 第2号(2年間) 第1号(1年間) 第2号(2年間) 第3号(2年間)
基本人数枠 基本人数枠の2倍 基本人数枠の2倍 基本人数枠の4倍 基本人数枠の6倍


(表7-3)企業単独型

企業区分 通常の者 優良基準適合者
第1号

(1年間)
第2号

(2年間)
第1号

(1年間)
第2号

(2年間)
第3号

(2年間)
法務大臣および厚生労働大臣が継続的で安定的な実習を行なわせる体制を有すると認める企業 基本人数枠 基本人数枠の2倍 基本人数枠の2倍 基本人数枠の4倍 基本人数枠の6倍
上記以外の企業 常勤職員総数の
20分の1
常勤職員総数の
10分の1
常勤職員総数の
10分の1
常勤職員総数の
5分の1
常勤職員素数の
10分の3


(表7-4)その他の注意事項

  • 1)常勤職員数には、技能実習生(1号、2号、3号)は含まれません。
  • 2)団体監理型、企業単独型ともに、次の人数を超えることはできません。

    (1号技能実習生:常勤職員の総数、2号技能実習生:常勤職員数の総数の2倍、3号技能実習生:常勤職員数の総数の3倍)
  • 3)特有の事情のある職種については、事業の所管大臣が定める告示で定められた人数となります。
  • 4)止むを得ない事情で他の実習実施者から転籍した技能実習生を受け入れる場合、上記の人数枠と別に受け入れることが可能です。

法定の体制整備とその他受け入れ準備

技能実習計画の作成で法定事項が明確になりますので、その要件を満たす体制の整備とともに、職場環境を見直すなど、技能実習生を受け入れるための準備が必要です。体制作りにあたっては、(表6)の11)と12)の要件を満たすとともに、13)~16)に記載された技能実習生の待遇面で、以下の要件を意識することが重要です。


(表8) 法定の体制整備(技能実習法および同法施行規則で規定された整備事項)

整備項目 内容
実習実施者の指導体制 1)技能実習責任者の設置 実習実施者またはその常勤の役員もしくは職員であって、技能実習指導員、生活指導員等を監督し、技能実習の進捗状況全般を統括管理します。要件として、過去3年以内に技能実習責任者講習を修了していることが求められます。
2)技能実習指導員の設置 実習実施者またはその常勤の役員もしくは職員であって、修得等をさせようとする技能等について5年以上の経験を有する技能実習を行う事業場に従事する者が、技能実習の指導を行う必要があります。
3)生活指導員の設置 実習実施者またはその常勤の役員もしくは職員であって、技能実習を行う事業上に従事する者が技能実習生の生活の指導を行う必要があります。(一般的に必要な事項のほか、フィリピン人であれば、その特徴や場合によっては出身地域の事情等も踏まえ、きめ細かな対応が望まれます)。
1)日本人と同等額以上の報酬 技能実習生の報酬額は、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上である必要があります。
2)適切な宿泊施設の確保 実習実施者はまたは監理団体は、技能実習生のために適切な宿泊施設を確保している必要があります(寝室は一人4.5㎡以上)。
3)監理費の負担 監理団体から徴収される監理費を直接または間接に実習生に負担させることは禁止されています。
4)費用負担の適正額 食費、居住費等技能実習生が定期的に負担する費用について、食事、宿泊施設等を十分に技能実習生に理解させたうえで合意し、その費用が適正である必要があります。
5)帰国旅費 帰国旅費については、企業単独型実習実施者または監理団体が負担することになります。また、第2号技能実習を行っている間に第3号技能実習の技能実習計画の認定申請を行った場合には、第3号技能実習開始時の日本への渡航費用についても第3号技能実習を行わせる企業単独型実習実施者または監理団体が負担することになります。
6)労働保険の適用 労災保険、雇用保険の加入義務。
7)社会保険・厚生年金等の適用

・原則健康保険加入で、適用事業所でない事業所においては国民健康保険に強制加入となります。

・厚生年金保険の適用事業所では厚生年金に強制加入、適用事業所でない事業所においては国民年金の被保険者となります。

このほか、実習実施者は、雇用者として労働基準法や労働安全衛生法および労働組合法に適合した待遇を保証する必要があります。また、労働契約を締結する際の労働条件は、「就業規則」、「労働協約」、「労働基準法等の法令」の全てに適合した内容としなければならない点に注意が必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。フィリピン人技能実習生の受け入れについて解説してきました。フィリピンはいま、急激に労働力人口が増加していることに加え、日本においては、他国の技能実習生に比べて「介護人材」として期待する声が多いこともあり、受け入れ職種の幅が広がることで受け入れ人数が増加することが予想されます。国の歴史で醸成されてきたフィリピン人特有の気質や、非漢字圏の人にとっての日本語の難しさなど、受け入れに当たって対処すべき課題は少なくありませんが、この記事を参考にフィリピン人技能実習生の適切な受け入れを検討してみてください。