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中国人の技能実習生を受け入れる際のポイント

外国人技能実習制度については、2017年11月1日に「外国人の技能実習の適正な実施および技能実習生の保護に関する法律(以下、「技能実習法」)」が施行され、従前の制度の様々な問題点の改善が図られたところです。このような状況下、2016年を境に技能実習生の対日本派遣人数でベトナムにトップの座を渡した中国は、経済環境を含めた国情の変化もあり、技能実習生のあり方にも変化が表れています。

今回の記事では、中国人技能実習生を受け入れるにあたって、注意すべき点や受入れを成功させるためのポイントについて解説するので、ご参考ください。

中国人技能実習生の受入れ現状

まずは、外国人技能実習制度の実態と改善へ向けた取組内容について概括し、制度の抱える問題と、中国人技能実習生の受入れ現状について解説します。

外国人技能実習制度の抱える問題と改善の方向性

外国人技能実習生制度は、制度化された1993年以降、送出国の悪質なブローカーや送出機関、また、日本の監理団体による保証金や違約金などといった違法な金銭を要求するなどの行為が横行し、制度趣旨が蔑ろにされるケースが後を絶たないような状態が続いていました。

また、実習実施機関である一部の受入企業においても、高水準の技能を技能実習生が修得するための環境が未整備であり、むしろ、人権侵害や賃金の不払いなどの不法行為が常態化した結果、制度全体の歪みが技能実習生の失踪という形で表面化することとなりました。

技能実習生の失踪人数は、過去5か年で見ても、2012年の2,005人から毎年増え続け、2017年には7,089人となって2012年対比で3.5倍以上に増加してしまったのです。このような状況を問題視した国は、制度趣旨の徹底を図るため、2017年11月に「外国人の技能実習の適正な実施および技能実習生の保護に関する法律(以下、「技能実習法」)」を施行し、次のような技能実習制度の見直しと実習生の保護措置を講じています。

(表1)技能実習制度の見直し

法改正前(旧制度) 技能実習法施行(制度見直し)後
1)送出国と受入国間の取り決めのない保証金を徴収している等不適正な送出機関が存在した。 実習生の送出を希望する国との間で政府間取決めを順次作成することを通じて、不適正な機関の排除を目指す。
2)監理団体や実習実施者の義務・責任が不明確であり、実習体制が不明確で実効性がなかった。

・監理団体については「許可制」とし、許可の基準や欠格事由のほか、遵守事項、報告の徴収、改善命令、許可の取消し等について規定した。

・実習実施者については「届出制」とした。

・技能実習生ごとに作成する「技能実習計画」は個々に「認定制」とし、技能実習生の技能等の修得に係る評価を行うなどの認定の基準や認定の欠格事由のほか、報告徴収、改善命令、認定の取消し等を規定した。

3)民間の機関である(公財)国際研修協力機構が法的権限のないまま巡回指導を行っていた。 新たに「外国人技能実習機構(認可法人)」を創設し、監理団体等には報告を求め、実地検査を行う等の業務を行わせる。
4)総じて実習生の保護体制が不十分であった。 「通報・申告窓口」を整備するとともに、「人権侵害行為等」に対する罰則等を整備するとともに、「実習先変更支援」を充実する内容。
5)事業所管省庁等の指導監督や連携体制が不十分であった。 事業所管省庁、都道府県等に対し、各種業法等に基づく協力要請を実施し、これら関係行政機関で構成する「地域協議会」を設置して指導監督・連携体制を構築した。

中国人技能実習生の受入れ状況

まず、中国を含めた主な出身国別の技能実習生の受入れ人数を確認しておきましょう。過去5年間の推移は以下のとおりです。

(表2)在留資格「技能実習」の主な国籍別在留者数

国別 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
ベトナム

34,039

57,581 88,211 123,563

164,499

中国

100,108

89,086 80,858 77,567

77,806

フィリピン

12,721

17,740 22,674 27,809

30,321

インドネシア

12,222

15,307 18,525 21,894

26,914

タイ

2,312

6,084 7,279 8,430

9,639

このように、国別の技能実習生受入人数を見ると、かつて最も受入人数が多かった中国は、2016年を境にベトナムにその座を譲り、以降はベトナム人技能実習生が大幅に増加しています。中国人技能実習生が減少に転じた主な要因は、「中国国内の賃金水準が上昇しており、同水準なら国内で働く」という傾向が強まったという見方があります。

中国人技能実習生が減少した理由とは

しかし、減少の理由は、一概に国内賃金水準の上昇というだけではなさそうです。技能実習生制度における日本の立場は、「開発途上国等の青壮年を、日本の公私の機関に受け入れ、技能、技術、知識等を修得させることにより、当該国への技能等の移転を図るとともに人づくりに寄与する」ことにあります。

一方、送り出し側の中国にとっての技能実習生は、「労務輸出政策」のもとで経済政策の一形態として派遣するという位置づけでした。何より、技能実習生自身が、自らの訪日目的を海外への出稼ぎと理解していたこともあり、これらの事情を総合して、技能実習生の位置づけは「単純労働力という商品」、「労務輸出という政策」、「出稼ぎ労働者という自覚」が混在する複合的な存在として捉えられていました。

しかし、この中国人技能実習生の内面に大きな変化が現れ始めました。「人の移動」という意味で言うと、国際的に見て中国の技能実習生は「移民」と解釈されていますが(他の国の実習生も国際的には移民とされます)、中国国内でも移民とみなされる技能実習生は、近年ではグローバリゼーションの波に乗ろうと、自身の能動性を重視するようになってきたと言われます。

元来、中国人にとって海外への出稼ぎは、帰国してからの出世の手段として活用されてきた経緯があり、技能実習生にとっては、「自らのキャリアを高めるための源泉である」との感覚が根付いているという特殊性が指摘されていました。

この「海外出稼ぎ」を通じて成功を収めたロールモデルが多く存在する地域においては、海外出稼ぎをサクセスストーリーの登竜門として捉え、その地域の中学校や高校卒業後の進路の一つとして位置付けられているくらいです。

このような考え方のもとでは、出稼ぎの目的が「カネを稼ぐ」から「視野を広めて自分を高める」、または「自分磨き」へと変化し、さらに能動性を高めていくため、技能実習の行き先は必ずしも日本でなくとも良いことになります。中国人技能実習生にとって、日本は数ある選択肢の中の一国という位置づけに変化してきているのです。

このように、賃金水準の変化と中国人技能実習生の内面的な変化があいまって、日本へわたる中国人技能実習生の人数が減少していると考えられます。

中国人技能実習生の特徴

一口に中国と言っても国土が広く、発展著しい一部の都市を除けば、各地域に点在する様々な民族の集合体です。したがって、中国人の特徴や性格を一括りで語ることはできませんが、外国人技能実習という視点で見ると、受入機関ごとに、日本との関係性や、一定の人柄の評価が定まっている地域を重視して受入れているようです。

このため、様々なサイトで確認しても、一定のイメージが構築されている感があります。以下、その定評とともに、前述の中国人技能実習生減少の理由とも絡めて、中国人技能実習生の特徴を解説します。

一般的な評価

1)情に熱い

相互に密な関係性を築いた人に対しては情が深い・厚いという評価です。したがって、技能実習という媒体を通して、上司と部下または指導者と指導を受ける者という単純な線引きをせずに、気配りなどが実感できる対応ができれば非常に良い関係性を築くことができると考えられます。

2)損得による判断基準

中国人の場合、広い大陸にあって紛争の絶えない政情が続いたことで、国民の多くは経済的な部分を短期的な視野で捉えるようです。技能実習という場面でみれば、給料に関しては、中国国内の賃金水準が上がってきていますので、日本における実習内容とそれに対応した額であることを十分に説明し、納得させることが重要です。

また、前述のとおり、出稼ぎから自分を高める(スキル向上)ことへと内面的な変化が表れてきていますので、実習によって、彼らのキャリアにどう役立つのかと言う点も懇切に説明することが重要です。

3)血縁の重視・一人っ子

古来、中国では血縁を重視し、親を敬い家族を大切にします。また、近代に入っては一人っ子政策の影響で、親は子供を非常に大切にすることでも知られています。いわゆる「坊ちゃん・嬢ちゃん育ち」の若者が多く、我儘に育っていると評されますが、日本でも同じような状況が見られることもありますので、この点はあまり意識せず、十分なコミュニケーションのもと、双方が納得のいく技能実習を目指すことが肝要です。

社会学的な観点からの評価

中国人技能実習生の減少理由のところでも若干触れましたが、中国人特有の育った環境やそこで育まれた性向を理解することが求められます。一方で、慶応義塾大学の学術リポジトリ(注1)に格納された「中国人技能実習生の移動に対する主観的意味付け:当事者へのインタビュー調査」には、興味深い特徴が指摘されています。以下、このレポートで報告されている主な内容を紹介します。

地域社会の視点から、外国人技能実習生と受入れ先や地域社会との関係を分析する研究では、技能実習生の受入社会とのつながりは希薄であり、孤立する存在であること、また、技能実習生は「多文化共生」の支援対象とされている一方で、地域活動への参加や地域社会への加入に積極的な意思を示していないと結論付けています。

また、異文化への適応の視点からは、職場における問題の多くは、日本語能力の不足や文化習慣の差異、生活環境の変化によって引き起こされることが指摘されており、友人の有無と日本語能力の二つの要因が対日イメージに影響を与え、対日イメージがポジティブであるほど適応度も高いと分析しています。

日本で働き、生活するために、日本語の理解は何より重要であるのに、一部の技能実習生は、そのことについて認識しておらず、日本語学習に興味を示さないということも明らかであるとのことです。また、帰国後の働き方について、「日本で実習した業種で働く」と回答した人はわずかで、日本語の習得程度については、日本の就業先職場で必要とされる日本語を覚えるだけだったとのことです。

このような調査結果から見えてくるのは、技能実習の経験は実習生たちにとって一時的な職業形態に過ぎず、その後の就職に直接影響がないということです。しかしその一方で、中国人技能実習生は、母国に帰還した後、出身地の農村部および転出先の都市部において、技能実習という共通経験に基づいてインフォーマルなグループを結成しているようです。

また、このようなグループ化とあわせ、自らの人脈を使って、海外出稼ぎを仲介する斡旋ブローカーとなり、新たな移動を促進しているという実態も報告されています。これらのレポート内容は、外国人技能実習生に共通する部分と、中国の国情や中国人特有の考え方に基づく側面を表していますが、全ての中国人技能実習生の特徴として結論付けているわけではない点に注意が必要です。

以上のような、中国人に対する一般的な評価と社会学的な観点からの評価を参考に、個々の技能実習生とのコミュニケーションの中から、個々の特徴を把握する努力も必要となります。

(注1)学術リポジトリ

大学とその構成員が創造したデジタル資料の管理や発信を行うために、大学がそのコミュニティの構成員に提供する一連のサービスをいいます。大学が生み出した電子的資料を収集・保管し広く公開・提供するというオープンアクセスを進展させることで、収録情報規模の拡大や教育研究の活性化を目的としています。

中国人技能実習生を受け入れる際のポイント

中国人技能実習生の受入れを制度趣旨に則ったものとするためには、現状で把握されている問題点を整理し、その対策を講じることが重要なポイントとなります。外国人技能実習制度の抱える最も大きな問題は、前述した送出国および受入側の悪質・違法な金銭要求や、人権侵害、賃金の不払いといった不法行為です。

不法行為の排除と受入機関の選別

このような不法行為への対策として、2017年に技能実習法が施行され、併せて、その制度趣旨徹底の一環として、日本と技能実習生の送出国との間で、送出機関や監理団体の不法な保証金徴収等の排除などを目的に、「二国間取決め」が順次進められています(2019年末における取決めの相手国は15か国超)。

しかしながら、法令の整備と二国間取り決めはルールを厳格化したものであり、このルールの実効を確保するためには送出国ならびに受入機関の双方が、遵法精神に則った制度運営を徹底することができるか否かにかかっています。技能実習生の失踪問題はいまだ続いており、その理由のほとんどが送出国と受入機関の対応にあると言ってもよいでしょう。

受入形態別の「不正行為」を行った機関数の推移が入管管理局の資料からわかります。実習実施機関は賃金や残業不払い、暴力などの不正行為の問題ですので、自浄しない限り受入が成功することはありませんが、監理団体に問題がある場合は、悪質な監理団体を避け、優良な監理団体を見つけることが、中国人技能実習生の受入れを成功させる一つのポイントとなるでしょう。以下、不正行為の機関数と監理団体選定のチェックポイントを示します。

(表3-1)受入形態別「不正行為」機関数

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
企業単独型

0

0 2

2

団体監理型 監理団体

20

23 32 35

27

実習実施機関

210

218 238 202

183

230

241 273 239 213

(表3-2)監理団体選定のチェックポイント

項目 チェック項目例
管理体制

・一般監理事業許可を取得しているか

 

・適正な職員の質・人数を確保しているか

 

・送出国の母国語を話せる職員を採用しているか

 

・監理可能地域が狭い範囲に限定されていないか

 
面接等

・面接は職員が自ら行っているか

 

・送出機関による採用経路、技能実習生から徴収している手数料の金額を把握しているか

 
講習

・入国前講習に関する管理を現地で行っているか(送出機関任せになっていないか)

 

・入国後講習施設を自前で構えているか

 

・入国後講習中に、法定外の講習(衛生教育、安全教育、5S教育、健康管理教育等)を実施しているか

 
受入支援

・3カ月に一度以上の監査や訪問指導、定期面談を自社内で実施しているか

 

・社労士資格を有する等専門的な能力を有する者によって技能実習生の賃金等の待遇確認を行っているか

 

・受入企業・技能実習生に対して定期的な情報提供や勉強会等を実施しているか

 

・受入後にも継続的な語学教育を実施することが可能か

 
トラブル対応

・違法行為・不法行為の内容について正確に把握しているか

 

・監理団体内にトラブル対応マニュアルを整備し防止・対応策を把握しているか

 

・不測事態(失踪、途中帰国、病気、ケガ、犯罪、ハラスメント、賃金トラブル等)に関する対応の経験があるか

 
受入実績

・3年以上、通算300名以上程度の監理実績はあるか

 

・複数の送出機関・国からの受入れを行っているか

 

以上から、「コンプライアンス意識が強く」、「体制が整備され」、「法令知識が蓄積され」、「不測事態への対応ノウハウを有し」、「技能実習生の母国語での相談対応が自社で完結できるか」が監理団体を選定する重要なポイントとなります。

技能実習生の失踪者数と失踪動機の把握

また、技能実習生の失踪者数の推移や失踪動機を把握することで、受入側の課題が見えてきます。

(表3-3)技能実習生失踪者数の推移と失踪動機(法務省:技能実習制度の現状2018年3月23日より)

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
総数

3,566

4,847 5,803 5,058

7,089

ベトナム

828

1,022 1,705 2,025

3,751

中国

2,313

3,065 3,116 1,987

1,594

カンボジア

58 284

656

ミャンマー

7

107 336 216

446

インドネシア

114

276 252 200

242

その他

304

377 336 346

400

(表3-4)技能実習生の失踪動機(法務省の聴取評の集計・複数回答)出典:日本経済新聞2018/11/18

動機 回答割合
1 低賃金 67.2%
2 実習後も稼働したい 17.8%
3 指導が厳しい 12.6%
4 労働時間が長い 7.1%
5 暴力を受けた 4.9%

2016年から中国の失踪者数が減少に転じていますが、ベトナムと中国の受入れ人数が並んだのが2016年で、2017年以降は中国人技能実習生の受入れ数はベトナムの半分以下で推移していることを考えれば、受入人数に比例しているというだけで、劇的な改善があったとは考えられません。

また、失踪の動機については、「低賃金」の比率が高いことを考えると、残業の不払等の悪質なものも含め、技能実習者と実習実施機関に給与額に関する考え方のミスマッチがあると考えられます。ただし、ベトナムの技能実習生の場合は、来日するまでに100万円を超える大きな費用負担を借入金で賄っているという事実にも注目しなければなりません。

母国への仕送りや借入金の返済など、日本での生活費以外に要する費用の問題も指摘されているため、日本の受け入れ企業が全てブラックとは言い切れない事情もあります。中国についても同様の事情があると考えられますので、賃金問題は慎重に検討する必要があります。

注意点

ここからは、技能実習生を受け入れるときの注意点、受入機関が満たすべき法令上の制限や前提条件、等につき解説します。

技能実習計画の作成

技能実習実施者(受入企業)は、技能実習計画を作成し、「外国人技能実習機構」によりその計画が適当であるとの認定を受ける必要があります。技能実習計画は、技能実習生ごとに、第1号、第2号、第3号の各区分に応じて認定を受ける必要があります。

なお、技能実習の最終段階となる第3号技能実習計画は、実習実施者が、「技能等の修得等をさせる能力につき高い水準を満たすものとして主務省令で定める基準に適合していること」という要件がありますので、実習実施者は高い水準での体制整備が求められることに留意しなければなりません。

その上で、実習実施者は認定された技能実習計画に則って実習を行うことが求められます。計画と異なる実習が行われるなど違反があった場合は、改善命令の対象となり、場合によっては認定取消しの処分が下される可能性がありますので、実習の実施管理は厳格に行われなければなりません。この技能実習計画の認定基準とされる主要な項目と概要は以下の通りです。

(表4)技能実習計画の主要な認定基準

  • 1)修得技能等の要件(技能実習生の本国において修得等が困難な技能等であること)
  • 2)技能実習の目標の要件

    《第1号の目標》

    • ・技能検定基礎級またはこれに相当する技能実習評価試験の実技試験および学科試験への合格など。

    《第2号の目標》

    • ・技能検定3級またはこれに相当する技能実習評価試験の実技試験への合格。

    《第3号の目標》

    • ・技能検定2級またはこれに相当する技能実習評価試験の実技試験への合格。
  • 3)技能実習の内容の要件
    • ・同一の作業の反復のみによって習得できるものではないこと。
    • ・第2号および第3号については、移行対象職種・作業(主務省令別表記載の職種および作業)に係るものであること。
    • ・技能実習を行う事業所で通常行う業務であること。
    • ・移行対象職種および作業については、業務に従事させる時間全体の2分の1以上を必須業務とし、関連業務は時間全体の2分の1以下、周辺業務は時間全体の3分の1以下とすること。また、必須業務、関連業務、周辺業務のそれぞれについて、従事させる時間のうち10分の1以上を安全衛生に係る業務を行うこと。
  • 4)技能実習生の要件
    • ・年齢・制度趣旨理解
    • ・業務経験
    • ・送出国の公的機関からの推薦
    • ・修得技能等の現地活用(帰国後、修得等した技能等を要する業務に従事する予定があること)
    • ・一旦帰国(第3号の技能実習生の場合は、第2号終了後に1か月以上帰国していること)
    • ・再度の技能実習の原則禁止
  • 5)技能実習の要件
    • ・保証金や違約金契約の禁止
    • ・人権侵害行為が行われていないことの定期確認
  • 6)入国後講習の要件
    • ・第1号の技能実習生に対する入国後講習、入国後講習に専念するための措置
  • 7)複数の職種および作業の要件
    • ・複数職種の場合は、2号移行対象職種、相互関連性、実施の合理性があること
  • 8)実習実施機関の要件
    • ・第1号は1年以内、第2号および第3号はそれぞれ2年以内であること
  • 9)目標達成の要件
    • ・前段階における技能実習の際に定めた目標が達成されていること
  • 10)技能等の適正な評価の実施
    • ・技能検定、技能実習評価試験等による評価を行うこと
  • 11)適切な体制、事業所の設備、責任者の選任の要件・・・(表5)参照
  • 12)実習監理の要件
  • 13)日本人との同等報酬等、技能実習生に対する適切な待遇の確保・・・(表5)参照
  • 14)労災保険措置の要件
  • 15)帰国旅費負担の要件・・・(表5)参照
  • 16)優良な実習実施者の要件(第3号技能実習の場合)
  • 17)技能実習生の受入れ人数枠の要件・・・(表5-1~5-4)参照

技能実習生の受入人数(法令上の制限)

実習実施者が受け入れる技能実習生の人数については、企業の規模等に応じて上限数が定められています。「基本人数枠」、「団体監理型の人数枠」、「企業単独型の人数枠」があり、各人数枠は以下の通りです。

(表5-1)基本人数枠

実習実施者の常勤の職員の総数 技能実習生の人数
301人以上 常勤職員総数の20分の1
201人~300人 15人
101人~200人 10人
51人~100人 6人
41人~50人 5人
31人~40人 4人
30人以下 3人

(表5-2)団体監理型

通常の者 優良基準適合者
第1号(1年間) 第2号(2年間) 第1号(1年間) 第2号(2年間) 第3号(2年間)
基本人数枠 基本人数枠の2倍 基本人数枠の2倍 基本人数枠の4倍 基本人数枠の6倍

(表5-3)企業単独型

企業区分 通常の者 優良基準適合者
第1号
(1年間)
第2号
(2年間)
第1号
(1年間)
第2号
(2年間)
第3号
(2年間)
法務大臣および厚生労働大臣が継続的で安定的な実習を行なわせる体制を有すると認める企業 基本人数枠 基本人数枠の2倍 基本人数枠の2倍 基本人数枠の4倍 基本人数枠の6倍
上記以外の企業 常勤職員総数の
20分の1
常勤職員総数の
10分の1
常勤職員総数の
10分の1
常勤職員総数の
5分の1
常勤職員素数の
10分の3

(表5-4)受入人数におけるその他の注意事項

  • 1)常勤職員数には、技能実習生(1号、2号および3号)は含まれません。
  • 2)団体監理型、企業単独型ともに、次の人数を超えることはできません。
  • (1号技能実習生:常勤職員の総数、2号技能実習生:常勤職員数の総数の2倍、3号技能実習生:常勤職員数の総数の3倍)
  • 3)特有の事情のある職種については、事業の所管大臣が定める告示で定められた人数となります。
  • 4)やむを得ない事情で他の実習実施者から転籍した技能実習生を受け入れる場合、上記の人数枠と別に受け入れることを可能とします。

法定された体制整備と技能実習生の受入準備

技能実習計画の作成と併せ、法定された体制整備および職場環境の整備など、技能実習生を受入れるための準備が必要となります。法定の体制とは、(表4)の11)および12)の要件を満たすことであり、13)~16)の技能実習生の待遇面の整備です。具体的には、次のとおりです。

(表6) 法定の体制整備(技能実習法および同法施行規則で規定された整備事項)

整備項目 内容
実習実施者の指導体制

1)技能実習責任者の設置

実習実施者またはその常勤の役員若しくは職員であって、技能実習指導員、生活指導員等を監督し、技能実習の進捗状況全般を統括管理します。要件として、過去3年以内に技能実習責任者講習を修了していることが求められます。

2)技能実習指導員の設置

実習実施者またはその常勤の役員もしくは職員であって、修得等をさせようとする技能等について5年以上の経験を有する技能実習を行う事業場に従事する者で技能実習の指導を行わなければなりません。

3)生活指導員の設置

実習実施者またはその常勤の役員若しくは職員であって、技能実習を行う事業上に従事する者で技能実習生の生活の指導を行わなければなりません(一般的に必要な事項のほか、ベトナム人であれば、その特徴や場合によっては出身地域の事情等も踏まえ、きめ細かな対応を心掛けたいところです)。

技能実習生の待遇

1)日本人と同等額以上の報酬

技能実習生の報酬額は、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上でなければなりません。

2)適切な宿泊施設の確保

実習実施者はまたは監理団体は、技能実習生のために適切な宿泊施設を確保している必要があります(寝室は一人4.5㎡以上)。

3)監理費の負担

監理団体から徴収される監理費を直接または間接に実習生に負担させることは禁止されています。

4)費用負担の適正額

食費、居住費等技能実習生が定期的に負担する費用について、食事、宿泊施設等を十分に技能実習生に理解させたうえで合意し、その費用が適正である必要があります。

5)帰国旅費

帰国旅費については、企業単独型実習実施者または監理団体が負担することになります。また、第2号技能実習を行っている間に第3号技能実習の技能実習計画の認定申請を行った場合には、第3号技能実習開始時の日本への渡航費用についても第3号技能実習を行わせる企業単独型実習実施者または監理団体が負担することになります。

 

6)労働保険の適用

労災保険、雇用保険の加入義務。

 

7)社会保険・厚生年金等の適用

・原則健康保険加入で、適用事業所でない事業所においては国民健康保険に強制加入となります。

・厚生年金保険の適用事業所では厚生年金に強制加入、適用事業所でない事業所においては国民年金の被保険者となります。

このほか、労働基準法や労働安全衛生法および労働組合法に適合した待遇を確保しなければなりません。労働契約締結にかかる労働条件で言えば、就業規則、労働協約、法令(労基法等)のいずれの要件も下回ってはならないことに特に注意しなければなりません。

まとめ

中国人技能実習生の受入れにあたって重要なポイントは把握できたでしょうか。制度が抱える様々な問題に対応するため、法令改正等が行われて実習生の保護措置が強化されたことにより、送出国の関係機関や本邦の受入機関に制度趣旨に則った適正な運営が強く求められる内容となっています。特に受入機関の役割が非常に大きい中、中国人技能実習生の特性にも留意しなければならないという実情は、受入環境の整備と言う点で負荷がかかります。この記事をご参考いただき、中国人技能実習生の適法かつ適切な受け入れとともに、円滑な制度運営につなげてるよう、検討してみてください。