日本ではアジア圏の15か国から「外国人技能実習生」を受け入れています。技能実習生の数は年々増え続けており、今後も日本の労働力を補う大きな戦力として期待されています。さまざまな業種で技能実習生の受け入れが進んでいますが、具体的にはどのような仕事をしているのでしょうか。
当記事では、外国人技能実習生の業務内容を具体的に解説していきます。今後、増えていくと思われる注目の職種も紹介していきますので、外国人技能実習生の受け入れを検討中の方はぜひ参考にしてください。
INDEX
技能実習生の業務内容とは?
技能実習制度では、特定の職種や業務内容が対象として定められています。それぞれの職種で、どのような業務内容を担っているのかを詳しく解説していきます。
農業関係
農業関係では「耕種農業」と「畜産農業」の2つの職種で、外国人技能実習生を受け入れています。耕種農業での業務内容は「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」の栽培の3通りです。一方、畜産農業では「養豚」「養鶏」「酪農」が業務内容として挙げられます。
既に農業分野では外国人技能実習生が数多く働いていますが、繁忙期だけ働きにきてもらうといった雇用はできません。農業は忙しい時期が決まっていますが、それ以外の時期でも依頼したい仕事内容を決めておきましょう。
農産物の製造や加工、販売といった作業はもちろん、冬場の除雪作業なども業務の一部です。「耕種農業」の必須業務は栽培管理、「畜産農業」は飼養管理となっているので必ずこれらの業務を含めなければなりません。
漁業関係
漁業関係は「漁船漁業」と「養殖業」の2職種に分けられます。「漁船漁業」での作業内容は、下記の8項目あります。
- かつお一本釣り漁業
- 延縄漁業
- イカ釣り漁業
- まき網漁業
- 引き網漁業
- 刺し網漁業
- 定置網漁業
- かに・えびかご漁業
一方「養殖業」は、ほたてがい・まがき養殖のみです。漁業関係の業務内容としては、出港時の漁具積み込み作業や帰ってきた時の積み下ろし作業、船体補修作業なども含まれます。
必須業務は「漁具の製作・補修作業」「漁具・漁労機械の操作作業」「漁獲物の処理作業」の3種類です。必ず業務内容に含めるようにしましょう。
建設関係
建設関係はかなり業務内容が幅広く、22職種33作業あります。下記の表にまとめましたのでご確認ください。
職種名 | 作業名 |
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さく井 |
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建築板金 |
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冷凍空気調和機器施工 |
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建具制作 |
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建築大工 |
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型枠施工 |
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鉄筋施工 |
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とび |
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石材施工 |
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タイル張り |
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かわらぶき |
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左官 |
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配管 |
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熱絶縁施工 |
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内装仕上げ施工 |
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サッシ施工 |
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防水施工 |
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コンクリート圧送施工 |
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ウェルポイント施工 |
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表装 |
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機械設備施工 |
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築炉 |
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建設業は深刻な人手不足が問題になっている業種であるため、技能実習生が現場に入ってくれるのは企業にとっても大きなメリットになるでしょう。
とはいえ、建設業で技能実習生を受け入れるためには、建設業法第3条の許可を受けている必要があります。さらに、建設キャリアアップシステムに登録しておかなければならず、登録までは数か月かかるので早めに準備しておくようにしましょう。
食品製造関係
日本の食品安全衛生管理や製造技術のレベルは高いので、海外からも注目されています。そのため、日本の技術を学ぶために来日する人も少なくありません。
建設業同様、食品製造関係の業務も非常に多くなっています。11職種18作業ありますので、下記の表を参考にしてください。
職種名 | 作業名 |
---|---|
缶詰巻締 |
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食鳥処理加工業 |
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加熱性水産加工食品製造業 |
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非加熱性水産加工食品製造業 |
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水産練り製品製造 |
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牛豚食肉処理加工業 |
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ハム・ソーセージ・ベーコン製造 |
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パン製造 |
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そう菜製造業 |
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農産物漬物製造業 |
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医療・福祉施設給食製造 |
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他の職種に比べ、食品製造業は調理器具や機械などによる傷病が発生しやすくなります。特に日本語がまだあまり上手くない外国人技能実習生の場合、使用方法が不適切だと事故が起こりやすくなるでしょう。
そのため、機械の定期的なメンテナンスはもちろん、安全確保のための研修なども実施する必要があります。
繊維・衣服関係
繊維・衣服関係の業務内容は13職種22作業です。
職種名 | 作業名 |
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紡績運転 |
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織布運転 |
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染色 |
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ニット製品製造 |
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たて編ニット生地製造 |
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婦人子供服製造 |
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紳士服製造 |
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下着類製造 |
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寝具製作 |
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カーペット製造 |
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帆布製品製造 |
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布はく縫製 |
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座席シート縫製 |
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繊維・衣服関係においては、ベテラン社員の離職による人手不足が問題になっています。若い労働者がなかなか確保できず、外国人技能実習生の受け入れにより成り立っている企業も少なくありません。
繊維・衣服業界では約6,000の企業が技能実習生を受け入れています。しかしながら、違法な時間外労働や賃金の不払いといった不正行為も多発している業種でもあるため、受け入れる際は不正行為のないよう注意しましょう。
機械・金属関係
機械・金属関係は15職種29作業で、外国人技能実習生を受け入れ可能です。
職種名 | 作業名 |
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鋳造 |
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鍛造 |
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ダイカスト |
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機械加工 |
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金属プレス加工 |
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鉄工 |
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工場板金 |
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めっき |
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アルミニウム陽極酸化処理 |
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仕上げ |
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機械検査 |
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機械保全 |
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電子機器組立て |
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電気機器組立て |
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プリント配線板製造 |
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機械・金属関係においても、職人たちの高齢化が進んだことで人手が足りない企業が増えています。技術実習生の受け入れで業務を回している企業は多いですが、残念ながら優秀な人材でも終身雇用はできません。そのため、熟練者の確保が難しいのが現状です。
平成31年からは「特定技能1号」を取得することで、最大5年の就労が可能になりました。上手に制度を活用することで、人手不足の解消にもつながるでしょう。
社内検定型の職種・作業
「社内検定型の職種・作業」に分類されるのは、「空港グランドハンドリング」という職種のみです。業務内容は3種類あり「航空機地上支援作業」「航空貨物取扱作業」「客室清掃作業」となっています。
「航空機地上支援作業」は、航空機の到着から出発までの業務全般です。手荷物を航空機に搭載したり、取り降ろしたりするのも業務のひとつです。
「航空貨物取扱作業」は、航空輸送における地上支援業務になります。荷物の選定や仕分け、登録などの作業が業務内容に含まれます。
最後は「客室清掃作業」です。客室の遺失物の確認や清掃はもちろんのこと、飛行機の機体内部のクリーニングや機内品の補充作業も行います。決められた時間内に作業を行い、乗客が気持ちよく過ごせる空間を提供することが目的です。
その他
「その他」には、上記には分類できない業務内容が挙げられます。全部で20職種37作業あります。
職種名 | 作業名 |
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家具製作 |
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印刷 |
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製本 |
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プラスチック成形 |
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強化プラスチック成形 |
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塗装 |
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溶接 |
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工業包装 |
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紙器・段ボール箱製造 |
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陶磁器工業製品製造 |
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自動車整備 |
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ビルクリーニング |
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介護 |
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リネンサプライ |
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コンクリート製品製造 |
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宿泊 |
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RPF製造 |
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鉄道施設保守整備 |
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ゴム製品製造 |
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鉄道車両整備 |
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製本や塗装業、ビルクリーニングや介護といった幅広い職種が含まれていることが分かります。
昔はすべて手作業で行ってきた業務内容でも、最近では機械を導入することでオートメーション化が進んできています。そのため、外国人技能実習生の仕事内容も、実際の作業ではなく機械の管理や補助といった業務がメインです。
とはいえ、介護や宿泊といった業務では、マンパワーが必要になります。人手不足の業界も多いので、外国人技能実習生は大きな戦力になることでしょう。
技能実習生が就職することの多い職種は?
「外国人技能実習生」といっても、業務内容は多岐にわたることが分かりました。ここからは、技能実習生が就職することの多い職種を解説していきます。
人気の職種
法務省の調べによると、外国人技能実習生の就職が最も多い職種は「建設関係」となっています。令和3年度の認定件数は、全体の20.8%です。若者の就職が少なくなっており、2014年から2017年までの3年間で外国人技能実習生は約2.5倍もの増加を見せています。
次に多いのは「食品製造関係」で、令和3年度は19.5%と増加傾向にあります。特に女性の外国人技能実習生を受け入れている企業が多いのが特徴です。
3番目に多いのは「機械・金属関係」で、全体の14.9%です。中国やベトナム、インドネシアからは技術研修を目的としても利用されています。日本の機械・金属関係の技術力は高いので、発展途上国からは特に注目されています。
今後増えると予測される職種
「介護」の仕事は、今後増えると予測される職種のひとつです。「介護」は2017年11月に、新たに加えられた職種になります。超高齢化社会が進んでいる日本において、「介護」業界が人手不足になることは必至です。
ただし、「介護」の分野においては、入国時に日本語能力検定N4水準と非常に高い日本語力が求められます。高いハードルからなかなか受け入れには至っていませんが、条件が緩和されれば外国人技能実習生の就職率も増えていくと予想されています。
技能実習生に仕事を振り分ける際のポイント
技能実習生に仕事を振り分ける際には、いくつかのポイントを押さえておくことでトラブル防止が可能です。ここからは、3つのポイントを解説していきます。
相手の特性を見極める
最初のポイントは「相手の特性を見極める」ことです。日本人であっても、その人に合った業務内容を振り分けることで業務を効率的に進めることができます。同じように、外国人技能実習生といってもそれぞれに個性や特徴があるので、見極めながら仕事を振り分けることがポイントです。
個人の性格もありますが、出身国によって国民性が異なります。たとえば、陽気で場を明るくしてくれる人が多いフィリピン人や、穏やかな性格の人が多いタイ人など、国別の特徴を知っておくことで仕事が振り分けやすくなるでしょう。
必須業務は50%以上必要
外国人技能実習生が従事する職種や作業名は先述しましたが、それぞれの作業において必ず従事しなければならない「必須業務」というものがあります。必須業務に書かれている業務内容は、全体の作業の50%以上を占めていなければなりません。
たとえば、「耕種農業」の必須業務は栽培管理です。除雪作業や除草作業を依頼することもできますが、100%その仕事ばかり依頼することはできません。栽培管理をメインに、他の業務を組み合わせながら振り分けるようにしましょう。
分かりやすいマニュアルや注意表示を行う
最後は「分かりやすいマニュアルや注意表示を行う」という点が挙げられます。特に日本に来たばかりの外国人技能実習生は日本語があまり得意ではありません。マニュアルや注意表記に気づけないと、怪我や業務ミスの原因になります。
分かりやすい日本語に直したり、フリガナを振ったりと外国人にも分かりやすい表記を心がけましょう。たとえば「頭上注意」といった表記は、伝わりにくい可能性があります。「頭をぶつけないように気をつけましょう」など、誰にでも伝わる表現を追記しましょう。
まとめ
外国人技能実習生の業務内容を解説してきました。農業関係、漁業関係、建設関係、食品製造関係、繊維・衣服関係、機械・金属関係、その他と分類分けされ、それぞれにさまざまな作業が細かく振り分けられています。
業務内容は年々増えてきていますので、常に新しい情報を知っておくようにしましょう。また、どの業務においても「必須業務」が設けられています。必須業務は50%以上と決められていますので、仕事を振り分ける際には注意しましょう。