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技能実習を解説!気になる費用はどのくらい?

厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況(平成30年10月末現在)」によると、日本国内で働く外国人は2018年時点で146万人になります。2008年が48.6万人なので、ちょうど10年間で3倍になった計算になります。少子高齢化する日本において、労働者不足を解消する1つの手法が外国人労働者の受け入れになります。

また、建設業界で働く外国人はここ5年で4倍以上の伸び率で増加して2018年時点で約7万人となります。また、外国人を雇用する事業所は約2万カ所となります。建設業界は他の業界以上に少子高齢化が進んでいるため、今後も外国人労働者が増加していくものと予想されています。

そして、外国人労働者の受け入れ手法として活用されているのが技能実習制度になります。実際に、日本では働く外国人労働者の約2割が技能実習制度を利用しています。また建築業界においては技能実習を利用しての外国人労働者は2018年10月実績で4万人を超えており、全体の60%近い活用が進んでいる実態があります。

今回は、技能実習制度について概要や受け入れの流れと費用やメリットや注意点を解説します。

技能実習とは

外国人技能実習制度を、外国人労働者が日本で働くための制度と勘違いしている方もいるかもしれませんが、異なります。確かに外国人が日本で働くことが出来る制度ではありますが、そのこと自体を目的としていません。

外国人技能実習制度は、日本で培われた技能・技術・知識の開発途上国等への移転する事によって、開発途上地域等の経済発展を担う“人づくり”に貢献することが目的になります。つまり、日本の技術や技能を海外に移転することを目的にして、開発途上国の外国人に日本で働きながら学んでもらう制度になります。

技能実習の概要

ここでは技能実習の概要として、以下の項目を解説します。

  • ①受け入れ方式
  • ②区分と在留資格/期間
  • ③技能実習生の人数上限枠

①受け入れ方式

外国人技能実習生を受け入れる場合、以下の2つの受け入れ方式があります。

・団体管理型
・企業単独型

2018年末段階の在留者実績で、98%が団体管理型を採用しています。企業単独方式は国際展開をある程度の規模で実施している組織力も経験も豊富な大企業が採用する事が一般的です。中小企業が技能実習を検討する場合には、一般的には団体管理型を選択しています。

◯団体管理型

管理団体が技能実習生を受け入れた後に、管理団体の傘下にある実習実施企業で実際の技能実習を行う方式になります。

技能実習生を送り出す国の政府と、日本政府の二国間の取り決めを行います。その上で、海外側の送出機関と日本の管理団体を通じて、実習生が派遣されます。

管理団体

管理団体とは、営利を目的としない団体をいいます。具体的には、事業協同組合や商工会議所などがなります。技能実習生は日本の実習実施者と雇用契約を締結します。そのため、管理団体の行う行為は職業紹介になります。管理団体の許可があれば無料職業紹介事業の許可は必要ありません。管理団体は、技能実習生の紹介だけではなく実習前の実習生への研修や、実習開始後の定期的な実習生の管理などを行います。また、技能実習計画の作成のサポートやその他さまざまなサポートを行ってくれる技能実習を行う上で非常に重要な機関になります。

また、管理団体はここに入らなければいけない、という機関ではありません。複数の管理団体があり、どこに入会するのかは技能実習を実施する企業側が決定します。また、1つだけではなく、複数の管理団体へ入会する事も可能です。

なお、管理団体は以下の要件を満たしている事が必要になります。

・営利を目的としない法人
・管理団体の業務実施基準に従って適正に事業を行う能力がある。
・管理事業を健全に遂行できる財務基盤がある
・個人情報の適正な管理措置が講じられる
・外部役員ないしは外部監査措置の実施
・適切な外国の送出機関と技能実習生の取次契約を締結している
・上記以外に管理事業を行う上で適切な能力を有している

なお、詳細は厚生労働省の管理団体の許可で確認することができます。

◯企業単独型

実習実施企業が単独で、海外の現地法人や合弁会社などの海外の所属企業等の現地従業員等に対して、技能実習を行う方式になります。海外の所属企業等とは、以下の3項目に歓迎に合致する外国にある事務所をいいます。

1 日本の公私機関で外国にある子会社や合併会社や支店など
2

日本の公私機関との以下における国際取引の実績がある場合

・1年以上の継続的な取引

・過去1年以内で10億円以上の取引

3

日本の公私機関と業務提携等の綿密な国際的関係を有する機関であり、かつ法務大臣及び厚生労働大臣が認めた場合

②区分と在留資格/期間

技能実習には区分があります。区分は大きく以下の3区分になります。

区分

()は在留資格

期間中の活動等

入国後1年目

第1号技能実習

(技能実習第1号)*

技能などの習得活動を行う期間

入国後2〜3年目

第2号技能実習

(技能実習第2号)*

技能などの習熟をさせる期間

入国後4〜5年目

第3号技能実習

(技能実習第3号)*

技能などの熟達をさせる期間

各号の技能実習へ移行する際には、技能実習生に対して技能評価試験に合格することが求められます。第1号から第2号へは“学科”と“実技”の試験があり、第3号試験は“実技”のみになります。なお、第3号技能実習は限られた管理団体と実習実施者のみになります。優良な管理団体と優良な実習実施者のみが実施できます。

在留資格と期間は、技能実習生が所有する各号によって異なってきます。

*在留資格は受け入れ方式によって、末尾の記号が異なってきます。団体管理型であればカタカナの“ロ”が、企業単独型であればカタカナの“イ”が末尾に付きます。

例)企業単独型の第2号技能実習生の在留区分:技能実習第2号イ

③技能実習生の人数上限枠

技能実習生を受け入れる実習実施者=日本企業には、その受け入れ人数の上限設定があります。上限数は『受け入れ方式』と『実習実施者の常勤職員総数』により、“第1号の基本人数枠”が決定します。さらに、1号が全員2号になることを想定して基本人数枠の2倍を2号上限人数とされています。

また、優良基準適合者の場合には、第1号は基本人数枠の2倍となります。それに伴って、第2号と第3号はそれぞれ基本人数枠の4倍と6倍になります。

◯優良基準適合者

優良基準適合者とは、厚生労働省の定める120点満点の基準で6割(72点)以上に到達した実習実施企業になります。大項目と配点は以下のようになります。なお詳細は厚生労働省の「新たな外国人技能実習制度について」で確認する事が可能です。

項目 配点

1 技能等の習得等に係る実績

70点

2 技能実習を行わせる体制

10点

3 技能実習生の待遇

10点

4 法令違反や問題の発生状況

▲110点*

5 相談や支援の体制

15点

6 地域社会との共生

15点

法令違反や問題は発生した場合には減点対象となります。

技能実習生受け入れまでの流れと費用

技能実習生を実際に受け入れようとする時の具体的な流れとそれに係る費用について以下の順序で解説します。なお、受け入れ方式は一般的な管理団体型での説明を行います。

  • ①受け入れの流れの概要と費用感
  • ②受け入れの詳細

①受け入れの流れの概要と費用感

初めて技能実習生を受け入れようとすると、以下のような流れになり、272万円から334万円程度の費用が掛かります。(以下の費用感は2名を採用した場合の最低から最大の費用感を記載しています。)

項目 費用感

1 管理団体へ入会

13〜50万円

2 人選のための現地訪問

30〜50万円

3 技能実習生が入国する迄の手続きと費用(在留資格認定申請等)

35〜40万円

4 技能実習生が入国した後のやる事と費用(研修・講習等)

34万円

5 実習開始中の費用

160万円

合計

272〜334万円

②受け入れの詳細

◯管理団体へ入会

管理団体型で技能実習生を受け入れようとしたら、まずは管理団体への入会が必要になります。管理団体は以下のようにノウハウがないと実施できない『現地での人材募集』や『入国に関わる手続き』などをサポートしてくれるメリットがあります。また、管理団体によって親身に相談に応じてくれるところもあります。

技能実習生を受け入れようと検討する建設業の方は、まずはどの管理団体と共に技能実習生を受け入れするかを決定しなければいけません。選ぶ際のポイントは、技能実習制度について直近での実績がどのくらいあるのか、またその中でもどの国の実績を持っているのかなどがノウハウの蓄積状況が分かるため非常に重要になります。

入会に際して必要となる費用は、概算で3~20万円になります。詳細は以下になります。

入会金(あるいは出資金) 1万円~10万円
年間費/1年分 2万円~10万円

1つの管理団体で技能実習生を受け入れ続ける場合には、上記費用に変動はありません。但し、受け入れ人数を増やす場合や複数の国と地域から選ぼうとする場合など管理団体を増やす事も選択する必要が出てきます。その場合には、入会金や年会費は管理団体毎に発生します。

また、管理団体とは別になりますし、完全な任意になりますがJITCOに加入しそのサポートを受ける企業も多いです。JITCOは公益財団法人国際人材協力機構の略(2020年4月1日名称変更)で、技能実習や特定技能等の外国人材受け入れ制度の支援と助言を主な事業活動としています。

JITCOへの加入には企業の資本金に応じて5万円~30万円の年間費が発生します。

◯技能実習計画

技能実習を行う実習実施者は技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構の管轄する地方事務所等の認定課から認定を得ることが必要になります。また、技能実習計画は管理団体の指導を受ける事が求められるので、具体的な指示を確認することができます。

なお、主な審査基準は以下になります。

・修得する技能が技能実習生の本国では修得する事が困難である。
・技能実習の目的と内容と期間が実習区分の基準に合致している。
・技能実習修了までに、技能検定や技能実習評価試験等によりヒョ課を行う。
・事業所事に実習実施責任者を選任する。

また、必須業務は実習時間全体の1/2以上が求められます。必須業務とは、技能実習における主たる修得目的である技能等を修得するための業務をいいます。その他、必須業務に対する関連業務(実習時間全体の1/2以下)や周辺業務(実習時間全体の1/3以下)や安全衛生に係る業務などを実習計画に織り込んでいきます。技能実習計画の審査基準やモデル例は、職種と作業別に厚生労働省のホームページに記載がありますので、そちらを参考にするのが最も良い方法です。

〇人選のための現地訪問

技能実習生の人選は受入企業の希望を確認して各国の送出機関が候補を選出します。そのうえで受入企業が候補生と面談を行い、どの候補生にするのかを決定します。

基本的な流れは以下のようになります。

受入企業

年齢や性別や学歴/職歴などの希望する人材条件を提示します。

管理団体

人材条件を送出機関へ伝達します。

送出機関

人材条件に合致しそうな人材の選抜・あっ旋を行い、受入企業へ紹介します。

受入企業

候補者との面談を実施し、技能実習生を決定します。

なお、面談の方法は現地まで行って候補者と面談する企業もありますが、Skype等のテレビ電話での面談を行い現地に行かない企業もあります。顔を突き合わせて話をする事で多くの情報を得たい場合には、現地に行く事に勝るものはありません。一方で、すでにノウハウや情報を得ている場合には、速さと費用を抑える面でテレビ電話などを利用する事も検討すべきです。

費用については、現地に2名で行った場合の飛行機代や宿泊費等の概算で30万円~50万円としています。しかし、この費用はテレビ電話等を活用する事で無くす事も可能です。また、渡航する国や人数や宿泊先によって費用は変動します。

〇技能実習生が入国する迄の手続きと費用

技能実習生が決定したら、入国に必要な手続きを行います。その手続きは管理団体が実施します。

技能実習生の出身国と送出機関によって多少のばらつきがあります。以下は技能実習生が日本に来るために必要な手続き1名単価と2名採用した際の費用合計の目安になります。

1名単価

2名合計

在留資格認定申請(取次費用を含む)

2万円

4万円

総合保険(3年分)

5万円

10万円

健康診断

1万円

2万円

入国前講習

2万円

4万円

渡航等費用

10万円

20万円

合計

20万円

40万円

送出機関は、採用が決定した人への告知や健康診断を実施してくれます。また、日本へ渡航するまでの間になりますが、日本語や技能実習生の業種に応じたカリキュラムを組んで講習を行います。また、入管申請も監督省庁へ提出するのと同時に管理団体への必要書類も揃えます。

〇技能実習生が入国した後のやる事と費用

入国後に実施する事は管理団体による研修や講習、また技能実習を開始する前にもう一度健康診断を実施します。研修は日本語などの法律上必要とする研修になり、160時間から320時間を最大2ヶ月程度の時間をかけて実施します。この研修期間には、技能実習生には生活費を賄う目的で講習手当が支給されます。なお、技能実習の活動時間予定の1/6の時間を研修時間に充てる事が必要とされています。なお、この研修期間中は、実習実施企業と技能実習生ではまだ雇用関係を結びません。

1名単価

2名合計

法定研修

10万円

20万円

講習手当

6万円

12万円

健康診断

1万円

2万円

合計

17万円

34万円

〇実習開始中の費用

実習中の技能実習生の管理は管理団体が行うため、管理団体への管理費が発生します。また、技能実習生を送り出した現地の送出機関にも管理費用が発生します。

これらの管理費用は実習実施者がどれだけの人数の技能実習生を受け入れているかによって管理費用は変動します。また、技能実習生をどのような管理をするのかは実習実施者の負担も大きく変わってきます。技能実習生への訪問など、技能実習生のモチベーションを保つ管理を管理団体が実施してくれるように働きかける事も重要です。

1名単価

2名合計

年間管理費(管理団体への費用)

60万円

120万円

年間管理費(送出機関への費用)

12万円

24万円

帰国渡航費積立金

2万円

4万円

技能検定料

2万円

4万円

在留資格の更新関連費用

5万円

10万円

合計

81万円

162万円

上記以外にも実習実施者にかかる大きな費用が実習生の給与になります。送り出した国の人件費は概ね日本の人件費の1/5から1/10程度になります。しかし、外国人技能実習機構の指針で、同じ仕事をこなす日本人と同等の給与を支給する事となっています。残業などの時間外労働の有無の関係もありますが、毎月の給与が18万円前後になります。

実習生が意欲的な取り組みをするかどうかは給与設定と共に社宅などの住まいの問題実習実施者のスタッフとの距離感によるところが大きくなります。定期的に食事や遊びを共にするなどの時間の共有を図る事が意欲的な取り組みを引き出しますし、お互いの理解を深めるきっかけになります。これらのお互いの交友を深めるための費用も必要になります。

技能実習と特定技能との違い

技能実習について調べていくと、同じような言葉の“特定技能”という制度に気づく方も多くいます。技能実習と特定技能の受け入れ共に共通点は外国人労働者が日本で働くという点になります。技能実習は国際貢献の目的で技術や技能を身に着けてもらい他国の発展に寄与するという流れになっている事は前述のとおりです。

一方で、特定技能は日本の少子高齢化による労働力不足の解消を目的としています。
これらの目的の違いから、技能実習はスキルを身に着けさせるという事から単純労働を行うものではありませんでした。一方で、特定技能においては、労働力不足の解消が目的であるため単純労働を行う事も可能です。

なお、技能実習に技能実習1号と2号があったように、特定技能についても特定技能1号と2号があります。

・特定技能1号…受け入れる業種や職種において必要とされる相当程度の知識や経験がある事
・特定技能2号…受け入れる業種や職種において熟練した技術がある事

また、特定技能1号は4ヶ月、6ヶ月か1年のいずれかの更新期間があり、最長で5年間の滞在期間があります。1には妻子帯同は認められていません。一方、2号は6ヶ月、1年か3年のいずれかの更新期間があり、滞在期間に制限は無くなります。そのため、要件を満たす事で家族の帯同が可能になります。

特定技能は受入が出来る対象職種や業種が決まっています。2019年11月に1職種1作業が増えて、2020年3月時点では81職種の145作業となっています。また、建設関係でいうと、22職種33作業が対象となっています。職種と作業の詳細は外国人技能実習機構のホームページをご確認ください。

技能実習と特定技能の違いについて、建設業界での違いを中心に以下がまとめになります。

技能実習は実習生の出身国に帰る事が前提であったが、特定技能は日本に在留が可能です。また、要件を満たせば、技能実習から特定技能2号に移行な職種(例:型枠施工/鉄筋施工/左官/建設機械施工等)もあります。また、就労前後で技能実習には複数の機関がサポートしてくれるのに対して、特定技能の場合にはそういったサポート機関がなく企業と候補者のみになります。

技能実習生を受け入れるメリットと注意点

技能実習生を受け入れる事は結論としては非常にメリットが大きいです。一方で、初めて外国人技能実習制度を利用しようとすると、言葉や文化の壁や仕事への考え方など不安を覚える企業も多数います。

次に、技能実習生を受け入れるメリットと注意点を解説します。

海外展開の足掛かり

2020年の東京オリンピックに向けて。日本全体や建設業界の現在までの景気は好調でした。しかし、元々の日本の市場は少子高齢化で人口も労働力も減少している事は間違いありません。人口が減るという事は市場の規模が小さくなります。市場が小さくなっていく中で今までと同じやり方を続けていくと、“仕事の利益が減っていく”か“仕事自体が無くなる”の危険性が高まります。そうなると、日本国内から海外展開へ視点・資源を移していくという流れをとる企業も多数います。

実際に技能実習生の候補生選びに送り出し国の現地を見てみると、現在も様々な建設が続いていますが、今後10年から20年の単位で建設需要が高い事が分かります。一方で、機会に敏感なのも重要ですが、同じく準備や基盤造りも重要です。外国人技能実習制度を利用する事で、企業自体は国際化への第1歩になります。社長だけではなく、従業員も外国人と共に働くことで国際化しいては海外展開が身近に感じる事が出来ます。

また、海外展開を行う地域を絞ったうえで、外国人技能実習制度を利用していくと、現地の情報に強くなっていきます。また、現地の建設関係の企業とのコネクションなども出来てきます。そのため、先を見据えてかつ現実的な事業計画を作成するために必要な情報収集を進めることが可能です。

人材確保と社内の活性化

日本で働くという事は外国人技能実習生にとって大きなチャンスです。なぜなら、技能実習を通してしか学ぶことが出来ない技術・知識を身に着ける事が出来るという点は非常に大きなチャンスになります。そのうえで、技能実習期間で自分の国で働く事では実現が難しい金額を貯める事が出来る点や、日本語が話せることで技能実習終了後に再び日本企業に採用されるチャンスが広がります。技術を習得しながらお金を貯めて今後のキャリアを広げられるチャンスがある機会になるため、技能実習生は非常に真面目にかつストイックに技能実習に取り組む人材が多いです。

こういった人材確保を国内で実施すると、簡単ではありません。建設業における求人倍率は高くなっており、採用できたとしても求人広告費が高くなってしまうといった課題があります。また、明確な目的意識がある人と共に働くことは、職場に活気を生み出してくれます。当然実習生である以上、仕事で驚くほどの成果を出す事は少ないですが、仕事への真面目な取り組む姿勢などが社内の既存社員に伝わり、取り組む姿勢が改善される事で全体の生産性が向上したなどの良い事例は多数あります。

コミュニケーションと作業工程の改善

学ぶと同じくらい、教えるという事は難しい仕事です。日本語力が決して強くない外国人とともに働く事となるからです。5W1Hなどを適切に伝えないと、誤った理解が発生します。そのため、コミュニケーションの責任が“受け手”では成立しないことに気づかされます。技能実習生が理解して、意図した行動を行なって初めてコミュニケーションが成功するという、いわゆるコミュニケーションの“送り手”の工夫が進みます。この意思と工夫が進むと、日本人同士のコミュニケーションも改善し、指示漏れや食い違いを減らす事ができます。

作業工程についても同様です。新しい事を学ぶ姿勢が強い実習生ほど、色々な事に疑問を感じて“why?”という質問を投げかけます。その結果、作業工程や工程の一つ一つにある意味や目的が言語化されて、役目を終えながらも続けられていた作業や工程手順を変更する事で改善できる点などの業務改善・業務効率化につながる発見ができます。

教える事を通じて、目的や意味から業務改善を行う姿勢が組織に身につけられる事は変化が激しく大きい現代においては非常に重要な組織強化になります。

受け入れ手続きが煩雑

以降はデメリットになります。外国人技能実習制度で最も注意すべきは受入手続きが煩雑という事です。技能実習生を受け入れるまでに、以下のような手続きを踏む必要があるため、中長期的なプランを持って制度を利用する事が求められます。

・管理団体の選択と入会
・技能実習計画の作成と認定
・面談と入国のための在留資格やビザ申請

これらの事は急ぎで行う事ではないため、計画的に一つずつ時間をかけて処理をしていく必要があります。特に管理団体の選択は、その後の技能実習生の管理にも繋がるため、時間をかける事が必要です。時間をかけて慎重に選択する方が実習生を受け入れてからの諸問題の発生を未然に防ぐ事が出来ます。

ミスコミュニケーションが発生しやすい

言葉や文化の違いは、外国人の技能実習生と共に実習や仕事をする上では回避できません。特に建設業は危険な面もあるため、安全管理上ミスが許されない場面などもあります。しかし緊張を要する場面でも、技能実習生が単純なミスを繰り返してしまう事もあります。
そのような状況であっても、耐える事や相手のミスの原因を理解しようという追及力や伝える努力が受入側には必要になります。

場合によっては、受入側のたくさんの努力に関わらず、ミスコミュニケーションが修正できない場面などもあります。大事に育成しようという思いがあればあるほど実習生が理解してくれない事が歯がゆく感じてしまう場合もあります。それでも、じっくり時間をかけて相手のコミュニケーション能力が向上するのを待つのも必要な事です。また、実習実施者側の話し方をゆっくり簡単かつ簡潔にし、明確かつ具体的な指示を行う事を心掛けるなど出来る事を行うべきです。

外国人の技能実習生とのコミュニケーションを構築するためには、お互いの努力と工夫と忍耐が必要である事は認識すべきです。また、実習生と実習実施企業の間でどうしても解決しきれない面については管理団体の手助けを得る事は重要です。

育成後の延長が出来ない

技能実習制度においては、実習期間は通常の場合は3年と限定されています。3年というのは育成の面でいうと、決して長い時間ではありません。そのため、技能が身につきこれから一人前として戦力化してくるタイミングで実習期間が終了する事もある事です。

これについて、職種によっては特定技能へ移行できるものもありますが、基本的には技能実習制度が国際貢献を目的としている事に立ち返って割り切るしかありません。技能実習は単純な労働力の確保のためだけを目的とすることなく、海外進出の足掛かり社内の活性化などの目的を主たるものとして実施する事が適しています。

まとめ

今回は技能実習制度の手順や費用と、メリットや注意点についてまとめました。技能実習制度は意義を理解して、目的をもって利用する事で非常に有効な制度になります。最後になりますが、技能実習制度を上手く利用するためには、経験豊富でサポート体制が行き届いた管理団体を選ぶことは非常に重要です。なぜならば、管理団体が技能実習制度のやり方を示し、困った時に解決方法を示してくれる存在であるからです。

ぜひ、技能実習制度を行う事を明確にしたうえで、自社にとって最適な管理団体を選択し、実習生にとっても実習実施者にとっても実りある技能実習を実施できるようご検討ください。