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技能実習で受け入れることができる職種一覧

外国人の技能実習生を受け入れる企業は年々増加の傾向にあります。技能実習生を受け入れることのできる職種も年々拡大されており、日本に在留する外国人技能実習生はついに36万人を超えました。しかし、技能実習生を受け入れることができる職種はまだまだ限られており、受け入れを検討する場合は事前に職種などを確認しておくことが重要です。今回の記事では、外国人技能実習制度の概要や受け入れることができる職種の一覧を確認し、技能実習生を受け入れる際の注意点についても分かりやすく説明します。技能実習生の受け入れなどを検討している方は是非参考にしてください。

外国人技能実習制度とは

外国人技能実習制度は1960年代後半から海外の現地法人などで行われていた研修制度を原型として1993年に制度化されたものです。この制度はもともと「出入国管理法」と呼ばれる法律を基に日本に在留する外国人が報酬を受け取って実習を行うことができるという制度でした。その後、技能実習の適正な実施と技能実習生の保護を図る目的で2017年11月に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」という法律が施行され、現在はこれらの法律に則った技能実習の実施が求められています。まずは、外国人技能実習制度の概要や技能実習生の受け入れ方式、技能実習の区分などについて確認してみましょう。

外国人技能実習制度の概要

外国人技能実習制度はもともと開発途上地域の経済発展に貢献する目的で制度化されたものです。外国人に日本の技術や知識などを吸収してもらい、帰国した実習生によってこれらの技術などが開発途上地域に移転することを大きな目的としています。制度創設以来この目的は一切変わっておらず、技能実習法では「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と明記されていますが、人手不足の現在の日本では多くの外国人技能実習生が貴重な労働力として活躍しているのも現状です。厚生労働省の発表している資料では、令和元年6月末の技能実習生は約36万7千人にのぼり、東南アジアや中国などからの受け入れが中心となっています。

図1 技能実習生 国別構成比

(出典:厚生労働省ウエブサイト

図1で国籍別に技能実習生の構成を確認してみると、最も多く技能実習生をベトナムから受け入れており、その割合は45.1%と半分を超える割合です。2番目に受け入れの多い中国は28.3%、フィリピンが10.1%、インドネシアが8.0%と続きます。これらの技能実習生を受け入れることのできる職種については後ほど詳しく説明しますが、食品製造や建設関係、機械・金属関係などの幅広い職種で技能実習生は活躍しています。

技能実習制度は外国人の技能実習生が日本の企業や関係のある現地企業などと雇用関係を結んでいることを前提に、就労経験を経て日本でしか学べない技術や知識を身に付けることが目的です。そのため、技能実習生が自国で習得できるような技術や知識は技能実習の対象とはなりません。また、技能実習は技能実習計画に基づいて行うこととなっており、日本で就労できる期間は最長でも5年間と定められています。

技能実習生の受け入れ方式

外国人の技能実習生を受け入れる際には①企業単独型②団体監理型という2つの受け入れ方式が存在し、どちらの受け入れ方式を選択するかによって技能実習を実施する企業(実習実施者)の手続きなども大きく異なります。

①企業単独型

企業単独型とは、日本の企業が単独で海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の職員などを受け入れて技能実習を実施する方式です。企業単独型で技能実習生を受け入れる場合は次のいずれかに該当する外国人でなければなりません。

  • ・技能実習生は送り出し国の事業所や現地法人、合弁会社の常勤職員であること
  • ・日本の公私の機関と引き続き1年以上の国際取引実績または過去1年間に10億円以上の取引実績を有する機関の常勤職員であること
  • ・日本の公私の機関と国際的な業務上の提携を行っているなどの事業上の関係を有する機関で法務大臣が告示を持って定めるものの職員であること

さらに、受け入れる技能実習生も以下の要件を満たすことが必要です。

  • ・海外の支店、子会社または合弁企業の職員で、当該事業所から転勤又は出向するもの
  • ・習得する技能等が単純でないこと
  • ・18歳以上で、帰国後に日本で習得した技能等を生かせる業務に就く予定があるもの
  • ・母国で習得することが困難な技能等を習得するもの
  • ・送り出し機関や実習実施機関等から保証金などを徴収されないこと

また、実習実施者に対しても日本語や日本での生活に関する一般知識などの座学講座を一定時間以上実施することや、報酬について日本人が従事する場合と同等以上の支払いが必要となることなどが定められています。企業単独型の受け入れ方式ではこれらの条件をクリアしたうえで、現地の送り出し機関との雇用契約や入国管理局への申請などを自ら行わなければなりません。このように、企業単独型は受け入れ企業に大きな手間や費用などの負担がかかることから、主に大企業などの限られた企業が外国人技能実習生を受け入れる場合に選択する受け入れ方式です。


②団体監理型

団体監理型とは、商工会や中小企業団体などの営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、実習実施者である受け入れ企業等で技能実習を実施する方式です。監理団体型の受け入れ方式を選択する場合、技能実習生は入国後に日本語などの必要な講習を受け、実習実施者と雇用契約を結んで技能実習を実施します。団体監理方式では、監理団体が海外にある送り出し機関と連携し、現地での人材募集や面接、入国に関する手続きを受け入れ企業である実習実施者に代わって処理してくれるため、技能実習生受け入れの手続きなどが格段に楽になることは大きなメリットです。

ただし、実習実施者へ技能実習生の斡旋を行う監理団体には技能実習生と実習実施企業の間に立って実習生の権利などを保護することが求められています。そのため、監理団体には厳しい認定基準が設けられており、事前に外国人技能実習機構へ監理団体の許可申請を行って認可を受ける手続きが必要です。また、実習実施者である受け入れ企業は実習実施者であることを届け出る手続きが必要です。

以下の図2は①企業単独型と②団体監理型の受け入れ方式別に総在留者数をまとめた表です。

図2 受入形態別総在留者数

(出典:厚生労働省ウエブサイト

企業単独型と比べると団体監理型は実習実施者である受け入れ企業の負担が大幅に軽減されるため、全体の96.6%が団体監理型の受け入れ方式を採用しています。

技能実習の区分

技能実習制度では技能実習の区分が設けられており、それぞれの区分に応じて日本での実習可能期間や実習内容などが異なります。技能実習の区分は企業単独型と団体監理型の受入れ方式ごとに3つずつ設けられており、全部で以下の6つの区分です。

  • ①第1号企業単独型技能実習(在留資格「技能実習第1号イ」)
  • 企業単独型で受け入れる技能実習の区分で、入国後1年目の技能等を修得するために設けられている区分です。第2号企業単独型技能実習に移行するためには技能実習生が学科と実技の技能評定試験に合格しなければなりません。

  • ②第2号企業単独型技能実習(在留資格「技能実習第2号イ」)
  • 企業単独型で受け入れる技能等に習熟するため設けられている区分で、2~3年目の技能実習区分です。第3号企業単独型技能実習に移行するためには技能実習生が実技の技能評定試験に合格する必要があります。

  • ③第3号企業単独型技能実習(在留資格「技能実習第3号イ」)
  • 企業単独型で受け入れる技能実習の区分で4~5年目の技能等に熟達するための技能実習区分です。第3号企業単独型技能実習は技能実習計画の認定申請の際に優良認定を受けた実習実施者でなければこの技能実習を実施することができません。

  • ④第1号団体監理型技能実習(在留資格「技能実習第1号ロ」)
  • 団体監理型で受け入れる技能実習の区分で、入国後1年目の技能等を修得するために設けられている区分です。企業単独型と同様に第2号監理団体型技能実習に移行するためには技能実習生が学科と実技で行われる技能評定試験に合格しなければなりません。

  • ⑤第2号団体監理型技能実習(在留資格「技能実習第2号ロ」)
  • 団体監理型で受け入れる技能実習の区分で、2~3年目の技能等に習熟するために設けられている技能実習区分です。第3号団体監理型技能実習に移行するためには技能実習生が実技で行われる技能評定試験に合格する必要があります。

  • ⑥第3号団体監理型技能実習(在留資格「技能実習第3号ロ」)
  • 団体監理型で受け入れる技能実習の区分です。4~5年目の技能実習生を対象に技能等に熟達するために設けられた技能実習区分となっています。第3号団体監理型技能実習は企業単独型とは異なり、技能実習計画の認定申請の際に実習実施者と監理団体の両方が優良認定を受けなければ技能実習を実施することができない点は注意が必要です。

優良な実習実施者や監理団体の認定を受けるためには技能実習生の受け入れについて法令違反のないことが前提となります。また、技能検定等の合格率や技能実習の体制、技能実習生の待遇などから総合的に評価され、一定以上の要件を満たさなければ優良認定を受けることは不可能です。その代わり、優良認定を受けた実習実施者や監理団体には第3号技能実習の実習実施を含めた以下の拡充策が認められています。

  • 1 実習期間を3年間から最長5年間へ延長(第3号技能実習が実施可能)
  • 2 受け入れることのできる技能実習生の人数枠を倍増
  • 3 地域限定の職種や企業独自の職種(社内検定の活用)、複数職種の実習の措置が認められるなど対象となる職種が拡大

技能実習の区分では、優良認定を受けた実習実施者や監理団体でなければ第3号技能実習を実施することができません。これにより、実習期間が最長で3年となる場合もあるためこの点には注意が必要です。

技能実習で受け入れることができる職種一覧

最近は技能実習生を受け入れられる職種が広がりつつあります。これまで受け入れが盛んであった食品製造や建設関係、機械・金属関係だけでなく、現在は介護などの職種でも受け入れることが可能です。しかし、受け入れ可能な職種と作業は2019年11月時点で81職種145作業に限られているため、技能実習生の受け入れを検討する場合は事前にこれらの職種と作業についても詳しく把握しておかなければなりません。ここからは具体的に技能実習として受け入れ可能な職種と作業の一覧、作業の詳細について確認してみましょう。

受け入れ可能な職種と作業の一覧

技能実習制度で受け入れることのできる職種と作業は以下の通りです。

①農業関係(2職種6作業)

農業関係は主に田畑で栽培を行う耕種農業と畜産動物を育てる畜産農業の2つの職種があり、それぞれの職種に付随した6作業が対象となっています。

  • 1 耕種農業…施設園芸、畑作・野菜、果樹
  • 2 畜産農業…養豚、養鶏、酪農

②漁業関係(2職種9作業)

漁業関係は漁船漁業と養殖業の2職種9作業が対象となっており、漁船漁業については主に漁法ごとに区分された作業分類です。

  • 1 漁船漁業…かつお一本釣り漁業、延縄(はえなわ)漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業
  • 2 養殖業…ほたてがい・まがき養殖

③建設関係(22職種33作業)

建設関係は発展途上地域でも必要とされる技術や技能が多いため、22職種33作業が受け入れ可能な職種・作業として指定されています。

  • 1 さく井…パーカッション式さく井工事、ロータリー式さく井工事
  • 2 建築板金…ダクト板金、内外装板金
  • 3 冷凍空気調和機器施工…冷凍空気調和機器施工
  • 4 建具製作…木製建具手加工
  • 5 建築大工…大工工事
  • 6 型枠施工…型枠工事
  • 7 鉄筋施工…鉄筋組立て
  • 8 とび…とび
  • 9 石材施工…石材加工、石張り
  • 10 タイル張り…タイル張り
  • 11 かわらぶき…かわらぶき
  • 12 左官…左官
  • 13 配管…建築配管、プラント配管
  • 14 熱絶縁施工…保温保冷工事
  • 15 内装仕上げ施工…プラスチック系床仕上げ工事、カーペット系床仕上げ工事、鋼製下地工事、ボード仕上げ工事、カーテン工事
  • 16 サッシ施工…ビル用サッシ施工
  • 17 防水施工…シーリング防水工事
  • 18 コンクリート圧送施工…コンクリート圧送工事
  • 19 ウエルポイント施工…ウエルポイント工事
  • 20 表装…壁装
  • 21 建設機械施工…押土・整地、積込み、掘削、締固め
  • 22 築炉…築炉

④食品製造関係(11職種16作業)

食品製造関係では食品加工を中心とした11職種16作業が受け入れ可能です。

  • 1 缶詰巻締…缶詰巻締
  • 2 食鳥処理加工業…食鳥処理加工
  • 3 加熱性水産加工食品製造業…節類製造、加熱乾燥品製造、調味加工品製造、くん製品製造
  • 4 非加熱性水産加工食品製造業…塩蔵品製造、乾製品製造、発酵食品製造
  • 5 水産練り製品製造…かまぼこ製品製造
  • 6 牛豚食肉処理加工業…牛豚部分肉製造
  • 7 ハム・ソーセージ・ベーコン製造…ハム・ソーセージ・ベーコン製造
  • 8 パン製造…パン製造
  • 9 そう菜製造業…そう菜加工
  • 10 農産物漬物製造業…農産物漬物製造
  • 11 医療・福祉施設給食製造…医療・福祉施設給食製造

⑤繊維・衣服関係(13職種22作業)

繊維・衣服関係は紡績や織布、染色などをはじめとした13職種22作業で技能実習生の受け入れが可能です。

  • 1 紡績運転…前紡行程、積紡行程、巻糸行程、合ねん糸行程
  • 2 織布運転…準備工程、製織行程、仕上行程
  • 3 染色…糸浸染、織物・ニット浸染
  • 4 ニット製品製造…靴下製造、丸編みニット製造
  • 5 たて編ニット生地製造…たて編ニット生地製造
  • 6 婦人子供服製造…婦人子供既製服縫製
  • 7 紳士服製造…紳士既製服製造
  • 8 下着類製造…下着類製造
  • 9 寝具製作…寝具製作
  • 10 カーペット製造…織じゅうたん製造、タフテッドカーペット製造、ニードルパンチカーペット製造
  • 11 帆布製品製造…帆布製品製造
  • 12 布はく縫製…ワイシャツ製造
  • 13 座席シート縫製…自動車シート縫製

⑥機械・金属関係(15職種29作業)

機械・金属関係では技能実習制度創設時から受け入れ可能職種として認められている金属プレス加工などを中心に15職種29作業と幅広い受け入れが可能です。

  • 1 鋳造…鋳鉄鋳物鋳造、非鉄金属鋳物鋳造
  • 2 鍛造…ハンマ型鍛造、プレス型鍛造
  • 3 ダイカスト…ホットチャンバダイカスト、コールドチャンバダイカスト
  • 4 機械加工…普通旋盤、フライス盤、数値制御旋盤、マシニングセンタ
  • 5 金属プレス加工…金属プレス
  • 6 鉄工…構造物鉄工
  • 7 工場板金…機械板金
  • 8 めっき…電気めっき、溶融亜鉛めっき
  • 9 アルミニウム陽極酸化処理…陽極酸化処理
  • 10 仕上げ…治工具仕上げ、金型仕上げ、機械組立仕上げ
  • 11 機械検査…機械検査
  • 12 機械保全…機械系保全
  • 13 電子機器組立て…電子機器組立て
  • 14 電気機器組立て…回転電機組立て、変圧器組立て、配電盤・制御盤組立て、開閉制御器具組立て、回転電機巻線製作
  • 15 プリント配線板製造…プリント配線板設計、プリント配線板製造

⑦その他(15職種27作業)

上記の①から⑥に該当しない職種はその他として分類されており、最近注目を集めている介護など15職種27作業で受け入れ可能です。

  • 1 家具製作…家具手加工
  • 2 印刷…オフセット印刷
  • 3 製本…製本
  • 4 プラスチック成形…圧縮成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形
  • 5 強化プラスチック成形…手積み積層成形
  • 6 塗装…建築塗装、金属塗装、鋼橋塗装、噴霧塗装
  • 7 溶接…手溶接、半自動溶接
  • 8 工業包装…工業包装
  • 9 紙器・段ボール箱製造…印刷箱打抜き、印刷箱製箱、貼箱製造、段ボール箱製造
  • 10 陶磁器工業製品製造…機械ろくろ成形、圧力鋳込み成形、パッド印刷
  • 11 自動車整備…自動車整備
  • 12 ビルクリーニング…ビルクリーニング
  • 13 介護…介護
  • 14 リネンサプライ…リネンサプライ仕上げ
  • 15 コンクリート製品製造…コンクリート製品製造

⑧社内検定型の職種・作業(1職種3作業)

社内検定型の職種として空港グランドハンドリングが受け入れ可能職種に指定されています。グランドハンドリングとは航空輸送において空港等の地上支援業務を行う職種です。

  • 1 空港グランドハンドリング…航空機地上支援、航空貨物取扱、客室清掃

上記の81職種145作業では技能実習生を受け入れることができますが、国によっては特定の職種に対して技能実習生の送り出しを禁止している場合もあります。

作業内容は細かく定められている

技能実習生を受け入れられる職種と作業について確認しましたが、職種ごとの作業内容はより詳細に決められています。作業の定義から必須業務や関連業務、周辺業務といった業務の区分も定められており、技能実習計画にはそれぞれの業務を一定割合盛り込まなければならないため、これらの詳細な業務内容についても理解が必要です。この作業内容については膨大な量となるため全ての職種について紹介することはできませんが、ここではイメージしやすいパン製造職種のパン製造作業を例に挙げてどのような業務が明記されているかを確認してみましょう。

  • ・作業の定義
  • 小麦粉等の原料を計量し、水とパン酵母を加えてよく捏ね、パン生地をつくる。記事を発酵させた後に、所定の大きさに分割し、最終発酵室(ホイロ)に入れ、適度な温度や湿度を保って発酵させ、記事を膨張させる。膨張した記事をオーブン等に入れ、所定の時間過熱し、パンを焼き上げる作業をいう。

  • ・必須業務(移行対象職種・作業で必ず行う技能実習の区分に応じた業務)
  • (1)パン製造作業
  • ・第1号技能実習
  • 下記作業のうち③を必ず行い、他は必要に応じて行うこと。
  • ①生地の調整作業
  • ②生地の発酵作業
  • ③生地の加工作業
  • ④熱加工作業
  • ⑤仕上げ作業
  • ⑥製品検査作業
  • ・第2号技能実習

  • 下記作業のうち③④を必ず行い、他は必要に応じて行うこと。
  • ①生地の調整(材料の配合、仕込み等)作業
  • ②生地の発酵作業
  • ③生地の加工作業
  • ④熱加工作業
  • ⑤仕上げ作業
  • ⑥製品検査作業
  • ・第3号技能実習
  • 下記作業のうち③④⑤を必ず行い、他は必要に応じて行うこと。
  • ①パンの材料選定作業
  • ②生地の調整(材料の配合、仕込み等)作業
  • ③生地の発酵作業
  • ④生地の加工作業
  • ⑤熱加工作業
  • ⑥仕上げ作業
  • ⑦製品検査作業

  • (2)安全衛生業務(全ての技能実習区分共通)
  • ①安全衛生教育
  •  1.雇入れ時等の安全衛生教育
  •  2.機械、器工具、原材料等の危険性または有害性及びこれらの取扱方法
  •  3.安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能及び取扱方法
  •  4.作業手順(安全衛生としての清掃手順、殺菌手順等)
  •  5.作業開始時の点検(安全衛生)
  •  6.パン製造職種に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防
  •  7.整理整頓及び清潔の保持
  •  8.事故時等における応急措置及び退避
  •  9.その他パン製造職種に関する安全または衛生のために必要な事項
  •  10.労働安全衛生法関係法令(パン製造職種に関する部分に限る)についての詳細な知識
  • ②食品衛生教育(食品衛生法関係法令のうちパン製造職種に関する部分及び計量法関係法令のうち適正な計量の実施に関する部分の教育)
  •  1.作業手順(食品衛生としての清掃手順、殺菌手順等)
  •  2.作業開始時の点検(食品衛生)

  •  3.パン製造職種に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防
  •  4.食品衛生(清潔の保持)
  •  5.食品及び添加物に関する規定
  •  6.器具及び包装容器に関する規定
  •  7.表示に関する規定

  • ・関連業務、周辺業務
  • (1)関連業務
  • ①パンの包装作業
  • ②パンの保存作業
  • ③材料の準備・運搬作業(製造所内)
  • ④パン製造工程を含む調理パンの製造作業
  • ⑤パン製造工程を含むパン粉製造作業
  • ⑥パン製造用機械、設備、器工具等の清掃及び使用準備作業
  • (2)周辺業務
  • ①パンの工場内運搬作業
  • ②製造工場の清掃及び工場営繕作業
  • ③洋菓子製造作業
  • ④和菓子製造作業
  • (3)安全衛生業務(関連業務、周辺業務を行う際は必ず実施する業務)
  • 上記必須業務の安全衛生業務と同じ

パン製造職種のパン製造作業では上記のような必須業務や関連業務、周辺業務が定められており、それぞれの業務を以下のような割合で技能実習計画に盛り込むことが求められています。

  • (1)必須業務は全体の2分の1以上とし、職種・作業ごとに別紙に掲げるすべての必須業務を技能実習計画に盛り込むこと。
  • (2)関連業務は全体の2分の1以下とし、原則として職種・作業ごとに別紙に掲げる関連業務から選択し、技能実習計画に盛り込むこと。
  • (3)周辺業務は全体の3分の1以下とし、原則として職種・作業ごとに別紙に掲げる周辺業務から選択し、技能実習計画に盛り込むこと。
  • (4)安全衛生業務は各業務(必須業務、関連業務及び周辺業務)の10%以上とし、職種・作業ごとに別紙に掲げる安全衛生作業を技能実習計画に盛り込むこと。

こちらではパン製造職種のパン製造作業について詳細な作業内容を確認しました。他の職種の作業については厚生労働省で詳細を確認することも可能です。

技能実習生を受け入れる際の注意点

ここまで技能実習制度で受け入れることができる職種や作業、受け入れ方式、技能実習の区分について説明してきました。しかし、実際に技能実習生の受け入れを検討する際は更に注意しなければならないポイントがあります。その注意点は以下の3点です。

①第3号技能実習に移行できない職種や作業がある

既に説明した通り、優良な実習実施者や監理団体の認定を受けていなければ第2号技能実習から第3号技能実習には移行できません。しかし、技能実習の職種や作業によっては元から第3号技能実習に移行できないものがある点には注意が必要です。以下の8職種(空港グランドハンドリングについては3作業のうち1作業のみ)は優良認定を受けている実習実施者や監理団体であっても第3号技能実習へ移行することはできません

  • 1 築炉
  • 2 農産物漬物製造業
  • 3 医療・福祉施設給食製造
  • 4 紡績運転
  • 5 織布運転
  • 6 カーペット製造
  • 7 リネンサプライ
  • 8 空港グランドハンドリング(客室清掃作業のみ)

これらの職種と作業は第3号技能実習へ移行することができませんが、第1号技能実習から第2号技能実習への移行は可能です。そのため、第2号技能実習まで移行することを考慮しても最長で3年間の技能実習しか実施できない点に注意して実習計画を組み立てる必要があります。

②途中で職種を変えることは不可能

技能実習生を受け入れる際は入国前にそれぞれの実習生が職種を決めて外国人技能実習機構が認定を行います。しかし、一度認定を受けた技能実習生の職種について途中で変更することができない点には注意が必要です。そのため、技能実習生の受け入れを検討する場合は将来の事業内容や雇用情勢等も十分に検討したうえで職種を決定しなければなりません。

③制度の趣旨を理解した運用

外国人の技能実習制度はもともと発展途上地域に日本の技術や技能を移転する国際貢献を目的として創設された制度です。そのため、制度の趣旨を理解して運用しなければ法令違反や違反行為の指摘を受ける可能性があるため注意しなければなりません。

もともと、技能実習生に求められる要件には「習得する技術が単純でないこと」と明記されています。つまり、技術や技能の習得につながらない単純作業は制度の趣旨に反するため制度上認められていないのです。

現在の人手不足の状況を考えると安易な労働力確保のために技能実習制度を検討することもあるかもしれません。しかし、このような制度の利用は単なる雇用調整の手段にすぎず、技能実習制度の創設目的に合致しない運用です。法令違反によるペナルティを受けるような状況にはならないよう、制度の趣旨を理解して運用することが求められています。

まとめ

今回は技能実習で受け入れることができる職種や作業を中心に技能実習制度について解説しました。技能実習制度を上手に活用するためには、まず受け入れることのできる職種や作業を正確に理解しなければなりません。また、受け入れ方式や移行対象となる技能実習の区分についても正確な理解がなければ的確な判断は不可能です。

そのため、技能実習制度の概要についても正しく理解してから制度の利用を検討するというプロセスが重要になります。これらのプロセスを経て、技能実習で受け入れることのできる職種や作業、実習可能期間などを総合的に考慮することが技能実習制度を有効活用できる近道です。技能実習制度は複雑な手続きなども多いため、制度の利用をためらう事業主も少なくはありません。必要に応じて行政書士などの専門家や監理団体へ相談して、制度の有効活用について検討してみてください。