少子高齢化の影響で、日本の労働人口は減少の一途をたどっています。人手不足で悩んでいる経営者の方はとても多いのではないでしょうか。
しかしこのまま待っていても、意欲ある人材が応募してきてくれる可能性は限りなく低いですよね。いまや、日本は労働力の取り合いとなっていますから、労働者は…特に若者はいくらでも仕事を選べるのです。
それに、少しの間がんばれば技術が身につくような「根気のいる仕事」には、なかなか若者は興味を示しません。せっかく入社してきても飽きてすぐに辞めてしまうという残念なこともよく起こっていますので、このままでは日本の産業はどうなってしまうのかと不安にもなります。
この日本の産業の問題を解消しつつ、発展途上国のためにもなるようなシステムとして活用されているのが「外国人技能実習制度」です。外国人技能実習生は、この制度によって入国してきているのですが、そのシステムが複雑なために、「よくわからない」という声がよく聞かれます。
そこで、この記事では外国人技能実習制度について、できる仕事、どんな国から来ているか、受け入れ条件などについて、わかりやすく解説していきます。
INDEX
外国人技能実習生とは?
外国人技能実習生とは、技術を身につけるために外国から日本に働きに来ている人のことです。この技能実習生は日本政府が決めた「外国人技能実習制度」という厳格なルールによって入国しています。
外国人技能実習制度とは?
外国人技能実習制度とは、外国(開発途上国)の若い労働者を日本が受け入れ、日本の企業で一定の期間働いてもらい、そこで学んだ技術を母国の経済発展のために活用してもらおうというシステムです。
もう少し詳しく見ていくと、厚生労働省の文書では次のように書かれています。
技能実習制度は、我が国で開発され培われた技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、その開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度であり、(中略)「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と明記されています。
引用元:技能実習制度 運用要領
つまり外国人技能実習制度は、人手不足の解消のための労働力として使うのではなく、受け入れた外国人の方をきちんと教育して日本の技術を持ち帰ってもらい、母国の発展のために役立ててもらうというのが趣旨の制度なのです。
外国人技能実習生は単純労働の労働力として受け入れるのではないという点には、注意が必要です。快適に働いてもらうために受け入れ体制などは厳しく決められていますが、受け入れ側としては「意欲ある若い労働者によって社内が若返って活気づいた」など、さまざまなメリットも期待できます。
技能実習制度について詳しくは、厚生労働省の「技能実習制度 運用要領」をご覧ください。
できる仕事(業種)は?
外国人技能実習生ができる仕事は、日本政府によって詳細に決められています。仕事内容は追加、変更されることもありますが、次の7つの業種が受け入れ先として指定されています。
農業
畑作・野菜、養豚、養鶏、酪農などが対象の職種・作業として指定されています。
漁業
かつお一本釣り漁業、いか釣り漁業、ほたてがい・まがき養殖などが対象の職種・作業として指定されています。
建設
大工工事、鉄筋組立て、とび、タイル張り、左官、カーテン工事などが対象の職種・作業として指定されています。
食品製造
缶詰巻締、加熱乾製品製造、調味加工品製造、発酵食品製造、かまぼこ製品製造、ハム・ソーセージ・ベーコン製造、パン製造などが対象の職種・作業として指定されています。
繊維・衣服
織物・ニット浸染、靴下製造、婦人子供既製服縫製、紳士既製服製造、下着類製造、寝具製作などが対象の職種・作業として指定されています。
機械・金属
鋳鉄鋳物鋳造、ハンマ型鋳造、普通旋盤、金属プレス、機械板金、電気めっきなどが対象の職種・作業として指定されています。
その他
家具手加工、オフセット印刷、製本、圧縮成形、建築塗装、金属塗装、手溶接、段ボール箱製造、自動車整備、ビルクリーニング、介護などが対象の職種・作業として指定されています。
何人くらい来ているの?
技能実習生の数は、約37万人です(令和元年6月末の法務省データ)。前年から約4万人増えていて、平成23年からずっと増え続けています。
・技能実習1号とは、入国1年目の外国人技能実習生で、技能実習2号とは、入国2~3年目の実習生のことです。
・技能実習1号から2号に移行するには、所定の技能評価試験に合格する必要があります。
どんな国から来ているの?
技能実習生として来ている人が多い国は、①ベトナム、②中国、③フィリピンです(令和元年6月末の法務省データ)。中にでもベトナム人は技能実習生の半数以上を占めています。
外国人技能実習生の受け入れ方式とは?
外国人技能実習生の受け入れには「団体監理型」と「企業単独型」の2つの方式があります。そのうち団体監理型の受け入れが97.3%で、企業単独型の受け入れはわずか2.7%しかありません(令和元年6月末の法務省データ)。
①団体監理型:団体監理型とは、事業協同組合、商工会議所などが技能実習生をまず受け入れて、そこから傘下の企業に技能実習生を派遣して技能実習をおこなう方式です。
②企業単独型:日本の企業が海外の現地法人、合併会社、取引先企業などの職員を直接受け入れて、自社で技能実習をおこなう方式です。
※企業単独型での受け入れには厳しい条件がありますので、大企業だけが実施している受け入れ方式と言えるでしょう。
・外国人技能実習生は、日本語教育や必要な法律知識について講習を受けた後、日本の企業で働きます。
・外国人技能実習生の失踪などの問題は、大半が監理団体型の受け入れで発生していますので、管理団体は慎重に選びましょう。
・管理団体ごとに外国人技能実習生のサポート体制には大きな違いがあり、受け入れ費用も変わりますので、信頼できる管理団体を選ぶことが重要です。
団体監理型(中小企業向け)
団体監理型とは、事業協同組合、商工会議所などが技能実習生をまず受け入れて、そこから傘下の企業に技能実習生を派遣して技能実習をおこなう方式です。技能実習制度を利用している企業のうちほとんどの中小企業が、団体監理型で技能実習生を受け入れています。
企業単独型(大企業向け)
企業単体型とは、日本の企業が海外の現地法人、合併会社、取引先企業などの職員を直接受け入れて、自社で技能実習をおこなう方式です。受け入れるための条件が厳しいので大企業向けの受け入れ方式と言えるでしょう。
受け入れ期間と人数は?
受け入れ期間
外国人技能実習生の受け入れ期間は最長5年で、職種によっても変わります。ただし途中で試験を受けて合格したり一時帰国したりするなど、在留資格を得るためにはいくつかの条件があります。
外国人技能実習生は在留資格ごとに3タイプに分けられます。
・技能実習1号:1年目の実習生
・技能実習2号:2~3年目の実習生のうち条件を満たした者
・技能実習3号:4~5年目の実習生のうち条件を満たした者
※団体監理型の実習生には「ロ」、企業単独型には「イ」と付けて区別しています。
受け入れ人数
外国人技能実習生の受け入れ人数は、在留資格と受け入れ側の状態によって変わります。
団体監理型で受け入れた場合の人数
1号、2号の技能実習生の人数
1号(1年間) | 2号(2年間) | |
---|---|---|
基本人数枠 | 基本人数枠の2倍 | |
企業の常勤職員数 | 技能実習生の人数 | |
301人以上 | 常勤職員数の 20分の1以下 |
|
201人〜300人 | 15人 | |
101人〜200人 | 10人 | |
51人〜100人 | 6人 | |
41人〜50人 | 5人 | |
31人〜40人 | 4人 | |
30人以下 | 3人 |
※常勤職員としての目安は「雇用保険に入っている人」です。
※常勤職員数には、技能実習生は含まれません。
※技能実習生は、次の人数を超えて受け入れることはできません。
(1号:常勤職員数、2号:常勤職員数の2倍、3号:常勤職員数の3倍)
優良基準適合者の人数
優良基準適合者とは、技能実習生に対して優良な対応をしたと認定された企業と監理団体のことです。企業と管理団体がともに優良基準適合者に選ばれると、人数枠が広がって、通常よりも多くの技能実習生を受け入れることができます。
優良基準適合者 | ||||
---|---|---|---|---|
1号(1年間) | 2号(2年間) | 3号(2年間) | ||
基本人数枠 | 基本人数枠の2倍 | 基本人数枠の 4倍 |
基本人数枠の 6倍 |
|
企業の常勤職員の数 | 技能実習生の人数 | |||
301人以上 | 常勤職員数の 20分の1以下 |
|||
201人〜 300人 |
15人 | |||
101人〜 200人 |
10人 | |||
51人〜 100人 |
6人 | |||
41人〜 50人 |
5人 | |||
31人〜 40人 |
4人 | |||
30人以下 | 3人 |
※常勤職員としての目安は「雇用保険に入っている人」です。
※常勤職員数には、技能実習生は含まれません。
※技能実習生は、次の人数を超えて受け入れることはできません。
(1号:常勤職員数、2号:常勤職員数の2倍、3号:常勤職員数の3倍)
企業単独型で受け入れた場合の人数
1号(1年間) | 2号(2年間) | 優良基準適合者 | ||
---|---|---|---|---|
1号(1年間) | 2号(2年間) | 3号(2年間) | ||
常勤職員数の20分の1 | 常勤職員数の 10分の1 |
常勤職員数の10分の1 | 常勤職員数の5分の1 | 常勤職員数の10分の3 |
※企業単独型でも、団体監理型と同じ人数枠になる場合があります。
※常勤職員としての目安は「雇用保険に入っている人」です。
※常勤職員数には、技能実習生は含まれません。
まとめ
外国人技能実習制度について、できる仕事、国、人数、労働期間などについて解説しました。どんな内容だったか、あらためてふり返ってみましょう。
- ・外国人技能実習生とは、技術を身につけるために外国から日本に働きに来ている人のこと
- ・外国人技能実習制度とは、技能実習生を受け入れるための制度のこと
- ・外国人技能実習生制度の趣旨は、人手不足の解消のためではなく、日本の技術を母国の発展のために役立ててもらうこと
- ・できる仕事は、農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属、その他の7つの業種
- ・技能実習生の数は約37万人
- ・ベトナム、中国、フィリピンからの実習生が多く、特にベトナムは技能実習生の半数以上を占める
- ・外国人技能実習生の受け入れ方式には、団体監理型と企業単独型がある
- ・約97%の企業が団体監理型の受け入れ方式を利用している
- ・監理団体ごとに外国人技能実習生のサポート体制には大きな差がある
- ・受け入れ期間は最長5年で、職種によって変わる
- ・外国人技能実習生は在留資格ごとに、3タイプ(1号、2号、3号)に分けられる
- ・受け入れ人数は、在留資格と受け入れ側の状態によって変わる
- ・優良基準適合者として認定されると、受け入れ人数が増える
外国人技能実習生に快適に過ごしてもらい、受け入れ側企業にも多くのメリットがあるように、外国人技能実習制度には厳しいルールが設けられています。日本を働く場として選んでくれた外国の方のためにも、ルールを守って明るい社会を作っていきたいものですよね。