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技能実習生の失踪は多い?失踪理由や防止する方法は?

人手不足を解消する手段として近年注目を集めているのが「外国人技能実習制度」です。フィリピンやインドネシアといったアジア圏から日本で技能を習得するために外国人が来日する制度ですが、まだまだ課題も多く残されています。その課題の一つが「失踪」トラブルです。

せっかく雇用するのですから、技能実習生が失踪してしまうトラブルは可能な限り避けたいところでしょう。当記事では技能実習生の失踪トラブルの現状や失踪理由、また失踪を避ける方法について詳しく解説していきます。

技能実習生の失踪件数の推移

技能実習生の失踪件数の推移

法務省のデータを基に、技能実習生の失踪件数をみていきましょう。

平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年
失踪者数 5,803 5,058 7,089 9,052 8,796
技能実習生の総数 168,296 211,108 257,788 308,489 383,978
割合 3.4% 2.4% 2.7% 2.9% 2.3%

平成27年の失踪者数は5,803人でしたが、令和元年には8,796人と失踪者数はかなり増加しています。とはいえ、日本にいる技能実習生の総数が増えているので、割合でみるとそれほど大きな変化はありません。

それどころか平成27年の失踪者数の割合と比較すると、1%以上減っていることが分かります。失踪者の数だけを見るとかなり多くの人数が失踪しているように思われがちですが、技能実習生の総数も増加しているので失踪トラブルの発生確立が増えているというわけではないことも覚えておきましょう。

国別でみると一番失踪者が多いのはベトナム、続いて中国、カンボジアとなっています。ベトナムは来日している人数も多いので、その分失踪している人数も多くなってしまうのでしょう。

技能実習生が失踪する理由

技能実習生が失踪する理由

技能実習生が失踪するのはなぜなのでしょうか。ここからは、技能実習生が失踪する理由について、企業側の問題と実習生側の問題に分けて解説していきます。

企業側の問題

まずは企業側の問題からみていきましょう。企業に問題があると、技能実習生に限らず離職率が高くなるので改善するように努力が必要です。

企業側の問題で起こる技能実習生の失踪

賃金が安すぎる

最も多い要因が「賃金が安すぎる」ということです。法務省の調査によると、技能実習生の約7割が「賃金が安い」と回答しています。給料からは税金や保険、住宅費用などの費用が差し引かれるため、実際の手取り額が思ったより少ないと感じる実習生は少なくありません。

母国への仕送りをしている人も多く、手取り額だけでは生活もままならないという人も多いのです。そんな時に悪質なブローカーなどから「今の職場よりも稼げる仕事がある」などと紹介され、無断で職場を去ってしまうというケースも発生しています。

労働環境が過酷

「過酷な労働環境」も失踪理由のひとつです。職種や作業内容にもよりますが、技能実習生の中には過酷な状況で働かされている人も多いのが現状です。たとえば、長時間労働や深夜残業、休日出勤が続くと体は疲れてボロボロになってしまいます。

自宅でゆっくりできれば疲れも取れますが、住環境も整っていないとくつろげる時間がありません。日本語があまりうまくない実習生も多く、辛い状況を職場に相談することもできないでしょう。ストレスが積み重なった結果、逃げ出してしまうのも無理はありません。

理解不足

受け入れ側の理解が足りないことで、技能実習生が働きづらい環境になっている可能性もあります。日本では常識の範囲内であることも、技能実習生の母国で当たり前とは限りません。文化や習慣の違いを理解し、相手の考えを尊重する必要があるのです。

また、技能実習制度とは日本で技術を学び、その技術を母国に持ち帰ることを目的とした制度です。企業や日本人従業員の中には、外国人技能実習生を「安く雇える労働力」と勘違いしている人もいます。技能実習制度についての正しい理解を促すことで、外国人技能実習生に対する偏見や差別的な考えを減らすことができるでしょう。

パワハラを受けた

「パワハラを受けた」ことで、失踪する外国人技能実習生もいます。以前、建設会社で働いていたカンボジア人の外国人技能実習生が、職場内でパワハラを受けたことでうつ病を発症したという報道もありました。

また、日本語が通じない技能実習生に対して暴行が加えられるケースも発生しています。国籍に関係なく、パワハラやセクハラは人権侵害となるため絶対に許されない行為です。外国人だからという理由でパワハラを受け、失踪せざるを得なくなったというのはとても悲しい事例といえるでしょう。

実習生側の問題

企業側が努力をしても、実習生側の問題で失踪するケースもあります。次は実習生側の問題を解説していきます。

実習生側の問題で起こる技能実習生の失踪

日本の文化や生活に馴染めない

まずは「日本の文化や生活に馴染めない」という理由です。技能実習制度では家族の帯同が許可されていないため、単身で日本に来ることになります。慣れない土地で暮らしていくのは、想像以上に孤独で寂しいものです。

食べ物や気候が母国と違いすぎることも、ストレスになるでしょう。日本語がうまくない場合は誰かに相談することもできず、母国へ帰ってしまう技能実習生もいます。中には長期休暇で母国へ一時帰国をして、そのまま日本に帰ってこなくなるケースも発生しています。

母国へ帰りたくない

技能実習制度では、日本に滞在できる期間が限られています。滞在できる期間が終われば、母国へ帰らなければなりません。しかし、母国が過酷な経済状況にある場合は、日本でこのまま仕事をして稼ぎたいと思う技能実習生もいます。

そのため、在留期間があるうちに失踪して働き口を探そうと考えているのです。そのような人たちは、失踪後に働いて収入を得た後に出入国在留管理局に出頭します。そうすれば母国に帰ることができるので、失踪してしまう技能実習生がいるのです。

技能実習生の失踪防止方法

技能実習生の失踪防止方法

失踪する理由を踏まえたうえで、どうすれば技能実習生の失踪を防ぐことができるのかを考えていく必要があります。ここからは、外国人技能実習生の失踪防止方法を解説していきます。

信頼できる監理団体を選ぶ

まずは「信頼できる監理団体を選ぶ」ことが大切です。監理団体には「一般監理事業」と呼ばれる優良団体と、「特定監理事業」と呼ばれる普通団体の2種類があります。「一般監理事業」は外国人技能実習機構の厳しい条件をクリアした団体にのみ与えられる名称です。

そのため、できるだけ優良な監理団体である「一般監理事業」を選んだ方が良いでしょう。また、監理団体のサポート体制や採用方法にも注目してみてください。技能実習生が相談しやすいサポート体制のある団体であれば、失踪前に相談しやすくなります。実績が豊富な監理団体も、過去にさまざまなトラブルに対応してきていますので安心です。

労働条件を説明しておく

労働条件は事前にしっかり説明しておくようにしましょう。給料20万で採用しても、税金や年金、保険料などを差し引くと手取り額はかなり少なくなってしまいます。日本では当たり前ですが、外国人技能実習生には事前に説明しておかないとトラブルの原因になりかねません。

特に家賃や水道光熱費も給与から差し引かなければならない場合は、手取り額がかなり少なくなってしまいます。「思っていたより少ない」と実習生が感じてしまうと、失踪の原因になってしまうので事前に手取り額がどれくらいになるのかを説明しておくことがポイントです。

コミュニケーションを密に取る

「コミュニケーションを密に取る」ことで、実習生が相談しやすい環境を作りましょう。企業の責任者が見ていないところで、パワハラやセクハラが行われる可能性もあります。実習生のちょっとした変化にも気づけるよう、普段からコミュニケーションを取っておくようにしましょう。

職場内でイベントを催したり、食事に誘ったりすると実習生も職場に打ち解けやすくなります。技能実習生の中には日本語がまだあまりうまくない人もいるため、困った時に気軽に上司に相談することができません。こちらから変化に気づいてあげられるよう、日ごろから気にかけておくことが大切です。

労働環境を見直す

低賃金や劣悪な労働環境は失踪原因となるため、労働環境は定期的に見直す必要があります。最低賃金をクリアしていない場合など、企業側に問題があると判断されれば実習生が失踪した際に企業側の責任が問われることになります。

賃金額に問題がないかどうか、また上層部だけでなく現場にも技能実習制度が正しく理解されているかを確認しておくようにしましょう。国籍が違っても、相手には尊厳を持って接しなければなりません。労働環境を見直して、外国人技能実習生が働きやすい環境を整えましょう。

技能実習生の背景を知っておく

採用時には「技能実習生の背景を知っておく」ことも大切です。技能実習生の多くは、日本語の勉強費用などで借金を抱えている人が少なくありません。借金を抱えていること自体は珍しくありませんが、あまりにも多額の借金を抱えている場合はより高額な収入を求めて失踪するリスクが高くなります。

事前に借金額を確認し、自社の給料で返済できるかどうかを検討してみると良いでしょう。たとえば、月に20万円の返済が必要な借金額となると、現実的な返済計画とはいえません。給料だけでは足りず、不法就労のために失踪してしまうリスクが高くなるでしょう。

技能実習生が失踪した時の対処法

技能実習生が失踪した時の対処法

技能実習生が出勤せず、連絡も取れない場合は失踪した可能性があります。失踪してしまった場合は、慌てずに対処していきましょう。ここからは、技能実習生が失踪した場合の対処法を解説していきます。

監理団体に報告する

まずは「監理団体に報告」しましょう。監理団体とは、技能実習生と企業の橋渡しをしてくれる非営利団体です。技能実習生へのサポートはもちろん、企業の監査や指導も行っています。失踪前に実習生が監理団体へ、何か相談している可能性もあります。

知っている情報があれば、実習生を探す手がかりにもなりますので報告して聞いてみましょう。また、実績のある監理団体であれば、失踪などのトラブルにも慣れています。どのような行動をとったら良いのか、指示をもらいながら動くようにしましょう。

警察に相談する

技能実習生が事件に巻き込まれている可能性もあるため、警察にも相談する必要があります。特に自宅には荷物が残っており、貴重品やパスポートを持って出て行った形跡がない場合は注意が必要です。

職場の同僚や同じ寮に住む実習生に聴き取りを行い、最後にいつ顔を合わせたのかを聞いてみましょう。普段と変わったことはなかったか、悩んでいる様子があったかどうかも聞いてみてください。警察に相談する際にはできるだけ情報があった方が良いでしょう。

退職手続きを行う

失踪後、30日を過ぎたら「退職手続き」を行います。ただし、退職手続きを行うためには、就業規則にその旨を記載しておく必要があります。もし退職事項に記載がない場合には、「本人と連絡が取れず勤務継続の意思が確認できない状況が30日続いた場合」という定めを追記しなければなりません。

これから外国人技能実習生の受け入れを検討している企業は、就業規則を見直して退職に関する定めを必ず入れておくようにしましょう。失踪後30日を過ぎた後に退職手続きを行う際には、雇用保険と社会保険の資格喪失手続きを行ってください。

給料の支払いを行う

失踪したとはいえ、働いた分の給料は支払わなければなりません。失踪する前日までの未払い分の給与額を計算しておきましょう。口座振り込みで給与の支払いをしている場合は、今まで通り口座に給料を振り込んでください。

現金で渡している場合は、本人が戻ってきた時に渡せるように給料を用意しておきます。給料は技能実習生本人にしか渡せません。知人や監理団体を通しての支払いはできませんので、注意しましょう。

まとめ

技能実習生の失踪

ここまで見てきたように、外国人技能実習生の失踪はなかなかなくならないのが現状です。原因はさまざまですが、低賃金や労働環境の悪さなど企業側に問題があるケースも少なくありません。せっかく技能実習生を受け入れるのですから労働環境を見直し、できる限り技能実習生の失踪を防ぐように努力しましょう。

また、コミュニケーションを密に取り、実習生が気軽に相談できる体制を整えておくことも重要です。万が一、技能実習生が失踪してしまった場合には、落ち着いて監理団体や警察に相談しましょう。早めに対応することで、大きなトラブルに発展するのを避けることができるはずです。