平成29年に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」に伴い、外国人技能実習制度の対象職種に「介護」が追加されました。従来、外国人技能自習制度は存在しており、人材不足や企業の海外進出に大きく貢献してきました。しかし一方で、単純な人材不足の解消手段としてなっていない点や、実習生の扱いに関して大きな問題を抱えていました。
そのような現状の下で追加された「介護」は、一体どのような制度なのでしょうか?この記事では、技能実習の「介護」について、追加背景や条件、受け入れ手順などを詳しく解説します。介護の事業を経営しており、技能実習生の受け入れに興味がある方は必見です。
技能実習に「介護」が追加された背景
そもそも、技能実習の制度に「介護」が追加された背景には、どのような事情や理由があるのでしょうか。この章では、技能実習に「介護」が追加された背景と受け入れ時の注意点をお伝えします。
日本国内における介護職の人手不足
介護が追加された大きな理由として、日本国内における介護職の人手不足があると言われています。現在日本では、高齢者が増加して介護に対するニーズが増加している一方で、出生率の減少などの影響により介護を担う人材は減少傾向にあります。
実際、介護職員に対する有効求人倍率は2010年以降右肩上がりに増加しています。今後もこの傾向は続くと予測されており、2020年には約26万人、2025年には55万人もの介護人材が不足すると言われています。
このような深刻な人材不足を解消する手段として、技能実習に「介護」が追加されたと言われています(参考:介護職員不足の現状と将来性)。
外国人の介護職が想定に反して増えていない
介護の人材不足を解消する上で、外国人の受け入れは従来から行われていました。ベトナムやインドネシア、フィリピンとの経済連携協定(EPA)により、外国人でも在留資格を取得することで介護の職に就くことは可能でした。
しかし介護の在留資格を取得するには、4年の実務経験に加えて介護福祉士への合格が必要です。また、一定以上の日本語能力や介護の学校を卒業していることなども条件としてありました。
このように介護の在留資格はとても厳しいものであったため、当初の期待とは裏腹に外国人の介護職は増えませんでした。
この在留資格に取って代わり、外国人の介護職を増加させる目的で、技能実習の「介護」が追加されたと言われています。
介護職の技能実習生を受け入れる際の注意点
外国人だからといって、日本人の労働者と比べて扱いを悪くしてはいけません。たとえば最低賃金未満で働かせたり、サービス残業を行わせると法律に反するので注意が必要です。本来技能実習制度は、外国人に専門技能を伝達することで国際貢献を目指す目的で導入された制度です。
あくまで人材不足の解消は二次的な効果であるため、人材不足の目的だけで外国人をこき使うことのないよう注意しましょう。
技能実習における「介護」職種の概要
技能実習の「介護」には、他の職種と比べて異なる受け入れ要件が設定されています。そこでこの章では、介護職の技能実習生を受け入れるための要件についてわかりやすく解説します。
介護職種の受け入れに関する基本的な考え方
介護職種の技能実習制度は、次の3つの要件に対応するように設計されました。1つ目は、介護が「外国人が担う単純な仕事」というイメージにならないようにすることです。外国人が担う単純な仕事というイメージがついてしまうと、日本人からの介護職に対する人気が下がってしまうおそれがあるためです。
2つ目は、外国人実習生に対して、日本人と変わらない適切な処遇を確保し、日本人労働者の処遇・労働環境の改善の努力が引き続き行われるようにすることです。従来技能実習の制度を巡っては、外国人を不当な条件(賃金や労働時間など)で働かせることで、人材不足に対処する企業が問題となっていました。介護職については、こうした事態に陥らないように制度設計がなされています。
そして3つ目は、介護のサービスの質を担保すると同時に、利用者の不安を招かないようにすることです。技能実習生に対しても日本人介護職と同等のサービスを提供できるよう求めるということです。
介護で技能実習生を受け入れる際は、上記3つの考え方を踏まえておきましょう。
技能実習生に関する要件
介護の仕事に就く技能実習生については、「日本語能力」と「同等業務への従事経験」の2つの要件を満たす必要があります。
(1)日本語能力
介護の技能実習を遂行するには、技能実習の指導員や患者である高齢者とのコミュニケーションをスムーズに行えるだけの日本語力が必要です。
そのため、介護職の技能実習生については、下記の要件が設定されています。
- • 第1号技能実習(1年目の技能実習生)→日本語能力試験のN4に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者
- • 第2号技能実習(2年目の技能実習生)→日本語能力試験のN3に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者
なお日本語能力試験のN4は基本的な日本語を最低限理解できるレベル、N3は日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できるレベルであり、N3の方が難易度は高いです。
また、これと同等以上の能力を有すると認められる者とは、日本語能力試験以外で日本語能力を評価する試験(「J.TEST実用日本語検定」と「日本語NAT-TEST」)で、上記と同等レベルに相当する試験に合格している外国人を意味します。
介護職で技能実習生を受け入れる際には、上記で挙げた日本語能力試験の合格証明書を提出する必要があるので早めに準備しておきましょう。
(2)同等業務への従事経験
同等業務への従事経験とは、介護職に関する仕事に携わった経験を意味します。団体監理型の技能実習の場合、「同等業務への従事経験」または「団体監理型技能実習を行うことを必要とする特別な事情があること」という2つの条件のうちいずれかを満たす必要があります。
介護の技能実習においては、たとえば下記の経験が同等業務への従事経験として認められます。
- • 現地において高齢者または障害者の介護施設や居宅において、高齢者または障害者の日常生活上の世話や機能訓練などに従事した経験を持っている
- • 現地の政府から介護士の認定などを受けている
- • 外国における看護課程を修了している、または看護師資格を有している
実習実施者に関する要件
技能実習生を受け入れる企業(介護老人施設など)についても要件が定められています。具体的な要件は、「事務所の体制」、「技能実習指導員」、「技能実習生の受け入れ人数」の3つです。
(1)事業所の体制
介護の技能実習生を受け入れるに際しては、事業所は下記の要件を満たす必要があります。
- • 技能実習を行わせる事業所が、介護などの業務を行うものである
- • 開設後3年以上経過している事業所である
- • 技能実習生に夜勤業務や少人数の状況下で行う業務、緊急時の対応が求められる業務を任せる場合は、利用者の安全の確保などのために必要な措置を講ずることを決めている
なお注意すべきなのが、訪問介護をはじめとした患者を訪問する介護サービスは、指導体制を敷くことが困難であるという理由から、技能実習の対象となっていない点です。あくまで事業所内で介護のサービスを提供する場合のみ技能実習生を受け入れることができるので注意しましょう。
(2)技能実習指導員
技能実習生を受け入れるには、仕事を教えたり監督する「技能実習指導員」が必要となります。介護職の技能実習指導員に関しては、下記要件を満たさなくてはいけません。
- • 技能実習指導員のうち最低でも1人は、介護福祉士の資格を有する者、またはこれと同等以上の専門的知識や技術を有する者(看護師など)である
- • 技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任する
他の技能実習の業種では、技能実習指導員の配置人数に関して、技能実習生の人数に応じた基準はありません。「5名につき1名以上の配置」は介護のみの規定であり、見落としがちな部分なので注意が必要です。
(3)技能実習生の人数
介護職種で技能実習生を受け入れることができる人数枠は、介護を主たる業務として行う常勤職員の総数に応じて決まります。介護を主たる業務として行わない職員の場合、仮に常勤でも人数枠算定の基準には含めないので注意しましょう。
また、団体監理型と企業単独型のどちらの方式を採用するかによっても、受け入れ人数は異なります。受け入れ可能な技能実習生の人数枠は、具体的に下記の通りです。
•団体監理型のケース
事務所内の常勤職員の総数 | 一般の実習実施者 | 優良な実習実施者 | ||
---|---|---|---|---|
1号 | 全体(1号・2号) | 1号 | 全体(1号・2号) | |
1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
2 | 1 | 2 | 2 | 2 |
3〜10 | 1 | 3 | 2 | 3〜10 |
11〜20 | 2 | 6 | 4 | 11〜20 |
21〜30 | 3 | 9 | 6 | 21〜30 |
31〜40 | 4 | 12 | 8 | 31〜40 |
41〜50 | 5 | 15 | 10 | 41〜50 |
51〜71 | 6 | 18 | 12 | 51〜71 |
72〜100 | 6 | 18 | 12 | 72 |
101〜119 | 10 | 30 | 20 | 101〜119 |
120〜200 | 10 | 30 | 20 | 120 |
201〜300 | 15 | 45 | 30 | 180 |
301〜 | 常勤職員の20分の1 | 常勤職員の20分の3 | 常勤職員の10分の1 | 常勤職員の5分の3 |
•企業単独型のケース
一般の実習実施者 | 優良な実習実施者 | ||
---|---|---|---|
1号 | 全体(1号・2号) | 1号 | 全体(1号・2号) |
常勤職員の20分の1 | 常勤職員の20分の3 | 常勤職員の10分の1 | 常勤職員の5分の3 |
なお優良な実習実施者とは、技能の修得をさせる能力について高い水準を満たすものとして主務省令で定める基準に適合している企業を意味します。かなり厳しい要件を満たす必要があるため、基本的には「一般の実習実施者」の項目を参考にすると良いでしょう。
技能実習の内容に関する要件
介護の技能実習生を受け入れるには、技能実習の内容自体に関する要件も満たす必要があります。
(1)入国後講習
技能実習生が入国したら、必ず「日本語」、「日本での生活一般に関する知識」、「技能実習生の法的保護に必要な情報」、「円滑な技能の修得に役に立つ知識」について、一定期間講習を実施しなくてはいけません。
とくに介護職の場合は、「日本語」と「円滑な技能の修得に役に立つ知識」に関して、教える内容や時間数に基準が設けられています。(2)と(3)の項目で、それぞれの内容や時間数について詳しくお伝えします。
(2)日本語科目の講義
まず日本語については、最低240時間以上の講義が必要です。また、学習内容についても下記のように細かく指定されています(カッコ内は最低の時間数)。
学習内容 | 時間数 |
---|---|
総合日本語 | 100(90) |
聴解 | 20(18) |
読解 | 13(11) |
文字 | 27(24) |
発音 | 7(6) |
会話 | 27(24) |
作文 | 6(5) |
介護の日本語 | 40(36) |
合計 | 240 |
ただし技能実習生が、入国前に日本語能力試験のN3程度以上を取得していれば、上記の日本語科目のうち「発音」、「会話」、「作文」、「介護の日本語」について合計80時間以上の受講で良いと認められています。
また、日本語科目を教える講師についても、下記いずれかの条件に該当していることが求められます。
- • 大学や大学院で日本語教育課程を履修し、卒業もしくは修了している
- • 大学や大学院で日本語教育に関する科目の単位を26単位以上修得して卒業もしくは修了している
- • 日本語教育能力検定試験に合格している
- • 学士の学位を持っており、日本語教育に関する研修で適当と認められるものを修了している
- • 海外の大学や大学院で日本語教育課程を履修し、卒業又は修了している
- • 学士の学位を持っており、技能実習計画の認定申請日からさかのぼって3年以内において、日本語教育機関で日本語教員として1年以上従事した経験を持っており、かつ現時点で日本語教育機関の日本語教員の職を離れていない
(3)介護導入実習
介護職の技能実習生を受け入れる際には、介護に関する基礎的な事項を学ぶ「介護導入実習」という講習を、合計で42時間受講させる必要があります。
介護導入実習に関しても、下記のように学習内容や講習時間数が決まっています。
学習内容 | 時間数 |
---|---|
介護の基本Ⅰ・Ⅱ | 6 |
コミュニケーション技術 | 6 |
移動の介護 | 6 |
食事の介護 | 6 |
排泄の介護 | 6 |
衣服の着脱の介護 | 6 |
入浴・身体の清潔の介護 | 6 |
合計 | 42 |
なお、介護導入実習を行う講師に関しては、下記いずれかの条件に該当する必要があります。
- • 介護福祉士養成施設の教員として、介護領域の講義を教えた経験を持っている
- • 福祉系高校の教員として、生活支援技術などの講義を教えた経験を持っている
- • 初任者研修の講師として、生活支援技術などの講義を教えた経験を持っている
- • 実務者研修の講師として、生活支援技術などの講義を教えた経験を持っている
- • 特例高校の教員として、生活支援技術などの講義を教えた経験を持っている
(4)入国後講習時間数の短縮
技能実習制度の要件では、1か月以上の期間かつ160時間以上の入国前講習を受講した技能実習生については、入国後講習の総時間数を第1号技能実習の予定時間全体の12分の1以上に短縮することが可能となります。
とくに介護の技能実習については、入国前講習で、各科目について所定の時間数の2分の1以上の時間数の講義を実施した場合は、入国後講習で2分の1を上限として、各科目の受講時間数を短縮できることとなっています。
監理団体に関する要件
監理団体とは、技能実習生を受入れ、技能実習を行う各企業において技能実習が適正に実施されているかを確認し、指導をしていく役割を担う機関です。
介護の技能実習生を受け入れるに際しては、この監理団体に関してもいくつか要件が設定されています。
(1)法人形態
団体監理型で介護職の技能実習生を受け入れる際には、監理団体は下記いずれかの条件を満たしていなくてはいけません。
- • 商工会議所や商工会、中小企業団体、職業訓練法人、公益社団法人、公益財団法人である
- • 法人の目的に介護事業の発展に寄与することなどが含まれている、全国的な医療又は介護に従事する事業者から構成される団体(支部を含む)である
(2)技能実習計画の作成指導
技能実習計画の作成に際しては、技能移転の対象となる項目ごとに詳細な計画を作成することが必要です。なお介護職種の技能実習計画の審査基準とモデル例は、厚労省のホームページに載っているものを参考にしましょう。
とくに介護職の場合、技能実習計画の作成の指導にあたっては、適切かつ効果的に技能の修得をさせる観点から、介護福祉士や看護士などの一定の専門性を持つ者が実施する必要があります。
そのため監理団体には、介護職として5年以上の経験を有する介護福祉士や看護師などがいることが要件となっています。この点は介護職の技能実習に特有の要件なので注意しましょう。
細かい要件は他にもあるものの、技能実習「介護」の基本的な概要は以上となります。見てもらってわかるように、介護職はその専門性や特殊性から、他の職種にはない要件がいくつも設定されています。
介護職の技能実習生を受け入れる場合は、要件をしっかりと確認した上で受け入れるようにしましょう。なお技能実習「介護」についてさらに詳しく知りたい方は、国際研修協力機構が公開している解説ページを参考にしてください(外国人技能実習制度とは 介護 公益財団法人 国際研修協力機構)。
介護の技能実習生の受け入れ手順
では、介護の技能実習生を受け入れるには、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか?一般的には、下記の手順で技能実習生を受け入れることとなります。なお今回はメジャーな受け入れ方法である、「団体監理型」の受け入れ手順についてご紹介します。
実習生受け入れの相談・申し込み
介護の技能実習生を受け入れたいと思ったら、まずは監理団体に実習生受け入れの相談をしましょう。相談を経た上で実習生を受け入れる意思が固まったら、そこで申し込みを行います。
ただし前述したとおり、介護職の技能実習生を受け入れるには、監理団体の要件も満たしている必要があります。あらかじめ監理団体が条件を満たしているか確認した上で、本格的な相談や申し込みを行いましょう。
なお技能実習生受け入れの申し込みでは、主に下記の書類が必要となります。ただし申し込みを行う監理団体によって、実際に必要な書類は変わってくるので必ず確認しましょう。
- • 組合加入申込書
- • 受け入れ要望書
- • 雇用条件確認書
- • 技能実習の期間中の待遇に関する重要事項説明書
- • 職種確認表
- • 就業規則
- • 職場や寮の写真
- • 職員数や事業者の概要がわかる書類
- • 財務諸表
- • 変形労働に関する協定書の写し(変形労働時間制の場合)
候補者の募集と面接
技能実習生の受け入れを申し込んだら、次に監理団体が提出された情報をもとに技能実習の候補者を募集します。技能実習生の募集に関しては、何かしらの理由で働けなくなった事態を想定して多めに候補者を選定しておくケースが多いです。
なお候補者の募集をかける前後最中で、雇用契約書を作成します。介護職の雇用契約書を作成する場合は、手取り額や待遇などを法律や規定に基づいて調節する必要が生じます。また、後ほど技能実習生との面接に備えて、職場環境がわかるような写真や動画付きのプレゼン資料を用意しておくのが一般的です。
候補者がある程度集まったら、実際に技能実習の候補者と面接を行います。基本的には、実際に海外の現地に赴いて、技能実習生の候補者と面接を行います。一連の面接を終えるには、4~5日ほどかかるので、あらかじめ予定を多めに空けておくのがベストです。
面接では、主に仕事内容や雇用条件を候補者に伝えつつ、質問や試験を行うことで適性を持つ候補者を選定します。実際に受け入れる技能実習生が決まったら、その場で雇用契約を技能実習生を締結することになります。
技能実習生による日本語試験の受験
前述した通り介護の技能実習生には、日本語試験への合格が原則必要です。そのため、内定が決まった技能実習生は日本語試験を受験し合格しなくてはいけません。
基本的には、現地の機関から送られてくる技能実習生の学習進捗の情報を参考に、事業所ごとに実習生の日本語試験合格日を予測した上で、計画作成や書類申請などの手続きを行います。また複数の内定者が存在し、それぞれ日本語試験への合格日がことなると予想される場合には、随時合格した実習生から受け入れる形となります(参考:介護技能実習生受け入れの手順 国際事業研究協同組合)。
技能実習計画の作成および申請
技能実習生が日本語試験の受験に取り組む間、受け入れ企業は監理団体のサポートを受けながら技能実習計画を作成し、それを申請する必要があります。
技能実習計画とは、文字通り介護の技能実習について具体的な内容を定めたものです。技能実習計画には、主に下記の項目を記載します。
- • 申請者の氏名と住所(法人の場合はその代表者氏名)
- • 法人の役員の氏名と住所
- • 事業所ごとの責任者の氏名
- • 技能実習を実施する事業所の名称と所在地
- • 技能実習生の氏名と国籍
- • 技能実習生の区分
- • 技能実習生の待遇(報酬や労働時間、休日・休暇、食費・住居費、宿泊施設など)
- • 技能実習の目的
- • 技能実習の詳細な内容および期間
- • 監理団体の名称や住所、代表者の氏名(団体監理型の場合)
また、技能実習計画には「登記事項証明書」や「技能実習生の履歴書」などといった書類の添付も必要です。
なお作成した技能実習計画と添付書類は、外国人技能実習機構に提出します。審査には1〜3花月程度かかる場合もあるので時間に余裕を持って提出しましょう。
在留資格認定申請書とビザの交付申請
技能実習計画の申請が通ったら、次は在留資格認定申請書の交付申請を行います。在留資格認定申請書とは、外国人技能実習生が日本に長期滞在することを認めてもらうための申請書です。こちらの書類作成についても、一般的には監理団体にサポートしてもらえます。
審査の結果、無事在留資格を認定してもらえたら、ビザの申請を行い入手します。
受け入れ体制の準備
前述した通り、介護の技能実習生を受け入れるには、宿舎やその他備品を準備しておく必要があります。
(1)宿舎
介護職に限らず、技能実習生を受け入れるには住む場所(宿舎)を確保しておかなくてはいけません。宿舎については、主に下記の要件を満たす必要があります。
- • 契約名義は実習を行う企業(賃貸物件を使用する場合)
- • 部屋の広さは、1人当たり4.5㎡(およそ3畳)以上
- • 徒歩または自転車通勤が可能な距離で、夜間通勤にも配慮した場所に宿舎がある
- • 寮費は実費を超えてはいけない(一般的には20,000円以下が好ましい)
- • 水道光熱費は、実際にかかった費用を宿舎に同居している人数で除した額以内
- • ゴミ捨てなど、生活習慣に関係する事柄についてはあらかじめルールや規則を定めておく
(2)実習生が使用する備品
技能実習生が快適に過ごせるように、最低でも下記にあげた備品は用意しておくのが好ましいです。
- • 家電(洗濯機、冷蔵庫、炊飯器、エアコン、電子レンジ、扇風機など)
- • 寝具(ベット・布団、シーツ、毛布、枕など)
- • 生活用品(石鹸、トイレットペーパー、シャンプー、洗面器、ティッシュ、ハンガー、物干し)
- • 炊事用品(鍋、フライパン、包丁、まな板、おたま、お箸、スプーンなど)
- • 掃除道具(掃除機、ほうき、バケツ、雑巾、洗剤など)
- • その他(カーテン、Wi-Fi、テーブル、椅子など)
また、業務で用いる制服やロッカー、社員証なども当然用意する必要があります(参考:外国人技能実習生受け入れの流れ 21世紀マンパワー事業協同組合)。
技能実習生の入国および講習受講
さて、ここまで準備を終えたらいよいよ技能実習生を入国させることができます。ただし、入国したからといってすぐに介護の仕事を任せることはできません。
日本に入国した技能実習生には、まず入国後の講習を受けてもらわなくてはいけません。およそ1ヶ月にわたって行われる講習では、日本語(会話やリスニング、介護業界で用いられている専門用語)、日本の文化、マナー(交通ルールやゴミの分別など)、労務に関する講習(労働法や入管法など)、消防訓練をメインに学習します。
講習が終わったら、本格的に介護の仕事を技能実習生になってもらえるようになります。
今後は外国人介護士が増える?
冒頭でもお伝えした通り、近年は介護業界での人材不足が加速しています。そんな中で外国人の介護士に対する期待が高まっていますが、果たして今後外国人の介護士は増加するのでしょうか?
まずこれまでの傾向を見ると、外国人の介護士は増加傾向にあります。外国人介護職員の受け入れを行うEPAという制度が平成20年度に始まって以来、この制度を利用して日本で働く外国人の介護職員は年々増加しています。平成31年1月1日時点で、EPAの制度で働く介護職員は、合計で3,165人となっています。
また、この記事でお伝えした介護の技能実習生や、日本の介護福祉士養成校に留学する外国人も増加傾向にあります。
このような傾向は今後も続くと予想されているため、外国人の介護士は今後もますます増加する可能性が高いです。およそ65%の利用者が外国人の介護士に満足しているというデータもあることから、介護紹介の人材不足を解消する救世主として外国人介護士は今後ますます重宝されるでしょう(参考:外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック)。
まとめ
今回の記事では、近年新たに解禁された技能実習の「介護」についてくわしく解説しました。技能実習の「介護」は、近年日本で深刻化している介護職の人材不足を解消する手段として大きく注目を集めています。
ただし介護の技能実習生を受け入れるには、技能実習生に日本語を習得してもらったり、膨大な手続き(技能実習計画の作成など)を済ませたりと、多々ある手続きを一つ一つこなしていく必要があります。また、介護職の技能実習生受け入れにあたっては、他の職種にはない特有の要件を満たさなくてはいけないため厄介です。
大変な手続きを経る必要はあるものの、技能実習生を受け入れることは、実習生本人のみならず介護の事務所にとっても大きなメリットをもたらします。
介護職の技能実習生を受け入れるか迷っている方は、ぜひこの記事でご紹介した内容を参考に、前向きに受け入れを検討してみてください。